第431話 麒麟


 麒麟の討伐依頼、その名前はとてもシンプルで分かりやすいものであった。が、分かりやすいだけに、その依頼についてもなんとなく分かってしまった。


 麒麟って、絶対カッコいい奴だよな。


 身軽で、角がカッコよくて、絶対に雷属性で、白というか青というかそんな色なんだろうな。


 うん、コレは確かにちょうど良い相手かもしれないな。


「分かりました。この依頼受けさせて貰います」


「おう、本当に受けるんだな。相手も強敵だから気を付けろよ?」


「はいっ!」


 久しぶりにワクワクするな。カッコよくて強いっていいよな、男なら憧れない奴はいないだろ。俺も小さい頃はヒーローに憧れ、次第にアニメのキャラに憧れたりしたもんだ。


 今ではすっかりと現実を知ってしまったのだがな。


 ……よし、行くか。


 ❇︎


 目的地に到着すると、そこは静かな森の中だった。


 森といっても、その緑は深く蒼く、何者も寄せ付けないような、そんな存在感を放っていた。木の幹も濃く、全体的に暗い印象を受ける場所だった。


 しかしそんな暗さが逆に神聖さを演出しているのだろう。戦いの場に相応しいな。このモンスターを誰に戦わせようか悩んでいると、


『ご主人様、どうか私めに相手させて頂きたいです』


 まさかの初めての従魔側からのコンタクトだった。その声の主はアスカトルだ。デトックスの戦いを見て感化されたのだろうか、言葉とは裏腹に凄い闘志を感じる。これだけ従魔からやる気を見せられたらもう任せるしかないな。


『分かった。ならば全力でぶつかってこい』


『ありがたきお言葉……』


 その言葉と共に姿を現したアスカトルは、以前見たときよりも、明らかに闘志というか、やる気というか、そういったものが滾っている。触れたもの全てを斬ってしまいそうな、そんな鋭さだ。


 アスカトルが来たところで、相手を探そうと思ったのだが、どうやらその必要はないらしい。向こうから直々にお出ましだ。


 暗い森が、圧倒的な気配がある、その方向にだけ綺麗に発光している。やはりそうだよな、そうでなきゃ始まらない。


 これで役者が揃った、な。






「ひひーーーーーーーん!」



「え?」


 鳴き声違くね? ってか鳴き声と同時に本体が現れたんだが、確かに、青白くて速そうで、発光してるし雷属性なんだろう。でも……




 お前、キリンじゃん。

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