第429話 鶏と卵
少年が消えてなくなったあと、そこには一つの宝箱が出現した。どうやらあれがボスで間違いなかったようだ。何の躊躇いもなくその宝箱を開けると、そこには一つの首飾りがあった。
・癒しのペンダント 職人級
翡翠色のペンダント。このペンダントを装備すると、自身やその周りの者を癒すことができる。また、装備者が使用する回復技の効果が上昇する。
なるほど、これは素晴らしい効果だ。しかもこれはデトックスにぴったりの効果じゃないか。今はまだ回復魔法等は覚えていないが、それでも解毒はできるだろうし、回復魔法もこれから徐々に覚えさせていけばいいだからな。
この装備のおかげでデトックスの方向性がよりクリアになってきたな。薬と毒、これがデトのテーマだな。薬は使い方次第では毒にもなる、というのは良く聞くし、最適だろう。
早く、回復魔法も覚えさせたいな。今回ので精神に対してもデトは力を持っているということが分かったから、その方面もぜひ活用していきたい。
別にこのゲームに精神患者がやってくるわけではないだろうが、精神といえば状態異常として多くの症状があるだろう。それらにも対応できればなんと心強いことだろう。
生かすも殺すもデト次第、みたいな感じになったら強そうだし、面白いだろう。これからにますます期待が持てるな。
『デト、これからも頼むぜ!』
そう言って俺はデトの首にペンダントをかけた。少し大きいかと思ったが、自動で調節してくれたのか、とてもいい感じになっている。とてもおしゃれだし、いいアクセントになってるぞ。
『勿体なきお言葉、しかと受け止めます』
そうして大役を務め終えたデトックスは帰っていた。
うん、やはり配下の成長というのはとても喜ばしいものだな。自分のことのように嬉しいし、何より成長を見守るというのが楽しいし、ワクワクする。
親の気持ちというのは、こういうものなのだろうか。いや、そんなわけないか。子供は反抗期もあるし、言うこと聞かないし、自分の望んだ通りの育ち方をするとも限らない。
それでも子供の成長を心から応援できる人物だけが親に相応しいのだろう。俺の親は……どうだったんだろうな。
でも、そういえば今回のボスも元々は少年だったよな。あのくらいの年齢だと、流石に本人に責任は無く、確実に周りの大人たちのせいなんだろうな。
子供は生まれることを選択できず、親は自由に子供を産むことができる。ならば、子をこの世に産み落とした以上、責任を持ってもらいたいものだな。さっき言ったほどのどんな時でも応援する、とまではいかなくても、せめて良好な関係というのは築けないものだろうか。
まあ、こんな若造で親の経験すらない言葉になんてなんの重みもないだろうがな。
それでも皆、一度は子供を経験したことがあるだろう。だからこそ共感できる人もいるんじゃないか?
って、なんで俺はこんなこと考えてんだ?
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