第427話 新たなる毒


 デトックスがその言葉を紡いだ時、その姿は竜へと変貌した。


 竜となり、威風堂々とした姿のデトックスは、元来の鈍重さは消え、ゆったり泰然とした面構えでその場にいた。


 しかし、対する相手モンスターも一瞬気圧されたかに見えたが、しっかりと反撃の構えを見せた。


「う、うぅわあああああ」


 手足があるはずの無い胴体から無数の手とも足ともつかない無数の何かが生えてきて、その男の、モンスターの体を形成していった。そう、まるで竜へと昇華したデトックスに対抗するかのようにその形を歪に、大きく肥大化させていった。


 白い肌色で埋め尽くされた男のモンスターに対し、デトックスは黒紫緑色を見にまとっている。


「……」


 ここまでくるともういよいよ大怪獣バトルだな。なんか規模感がおかしすぎてついていけなくなっていた。分割思考の一人が実況してたが気にしちゃダメだな。確か厨二病だからそっとしておかなければ。


❇︎


 亀竜とただの化け物、勝負はついてるかのように見えるが、そうとも限らない。あの化け物は所謂、憎悪、怨恨、嫉妬、そういった負の感情の集合体とも言える。


 最初は小さな、妬み、嫉み、恨み、悲しみだったのかもしれない。だがそれが次第に膨らみ、他人を喰らい、共鳴し更に肥大化していく。そうして出来上がったのがこの化け物だ。いわば、感情の毒とも言えるこの存在に、毒の使い手であるデトックスはいかにして戦うのか、非常に見応えがある。


「……」


 だからうるさいよな俺。なんか、実況がまたそれっぽいこと言ってるのも癪だよな。……ん? いや待てよ、実況してるのも俺なんだから、誇っても良くないか? 別に悪いことしてるわけじゃないし、なんなら凄いことだしな。やるじゃん俺!


「グァァアアアアアアアア!!」


 俺の煩悩を吹き飛ばすようにデトックスがデトらしからぬ咆哮を上げた。そしてその勢いのまま、相手に突撃した。


 しかし、相手モンスターも化け物、その突撃に対してもしっかり受け止め、なんならデトックスごと飲み込もうとしている。


 人の負の感情、闇の側面に対抗することができるのか、果てしなく底無し沼に打ち破ることができるのか、両者の拮抗は未だ続いている。


 デトックスは相手の腕を脚を手を足を全て食べているかのように見えた。しかし、もちろんそれだけでは全く追いついていない。その他の食べ漏らした手足達がデトックスの全身に絡みついていく。


 デト自身の手、足が絡みつかれ飲み込まれ、次第に甲羅にすら浸食されていく。


 人の業のいかに深きことか。デトックスは気づくともう顔だけしか見えていない状態になっていた。



「で、デ、デトーーーーーーー!!!」



 しかし、デトックスのその目はまだ死んでいなかった。

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