第425話 豪華な扉


 そんな訳でやってきました、ボス戦。というのも、道中で大した出来事が起きなかったのだ。出てくるモンスターが徐々強くなっていったり、罠とかのギミックの殺意が上がっていったりはしてたが、さして影響はなかったのだ。


 毒ガスの階からはデトックスがついてくるようにはなったが、それでも行進スピードにはなんら影響はなかった。カメってあんなに早く歩ける? 走れるんだな。


 これはもうウサギとカメの童話はもう変えた方がいいかもしれない。それか続編で無茶苦茶ウサギが努力して亀に打ち勝つみたいな話をつけた方がいいかもな。


 コツコツ頑張るってことだけじゃなくて、人は変われるっていうメッセージもつけられるしな。


 まあ、くだらない話は置いといて、何故ここがボス部屋なのか分かるか、というと階段を降りた先に大きな扉がズドーンと構えてあったからだ。


 もしかすると中ボスという可能性もあるが、そればっかりは行ってみないと分からない。ただ、ボス戦な気はする。扉の装飾が結構豪華なのだ、これで中ボスならここのダンジョンは相当稼いでいるのだろう。


 しかし、まだ未発見のダンジョンがそこまで稼げているのかは不明だし、そもそも稼ぎという概念があるのかも分からない。俺がダンジョン経営の異世界物に一時期ハマっていた影響でどうしてもそういう思考回路になってしまうんだよな。ダンジョンマスターの存在すら怪しいもんな。


 まあ、いるかどうか怪しい奴よりも目の前のボス戦だな。従魔達がどうやって攻略するのか楽しみだな。


『どうする? 一人ずついくか?』


『そうですね、私達の話合いでは一人ずつ行って自分の実力を見極めたいのですが、そもそもここのボスとは再戦可能なのか、という問題がありまして……』


 そう答えたのはアスカトルだ。しかし、それにしてもなかなか優秀だな、俺ですらそんなこと考えてなかったのにな。それにしても従魔達の話し合いってなんだよそれ、少しきになるじゃねーか。


『まあ、多分もっかい戦えるだろ。とりあえず一人ずつ行ってみたらどうだ? 再戦が無理だったら別のダンジョン行けばいいだけだからな』


『お気遣い、ありがとうございます。では、デト様からは如何でしょう。私達は一旦戻っておりますので』


『そうだな、それでいいんならそれで行こう。大丈夫かデト?』


『大丈夫でございます』


『よし、なら開けるぞ?』


 そう言って重い扉を開け放つと、そこにあったのは、四肢が欠落した。一人の男の姿だった。


「う、うぅ……」


 低い呻き声を上げ、恨めしそうにこちらを見つめている。俺が何かしたとでも言うのだろうか。


 顔は酷く一般的で、モブと呼ばれる存在に多くありそうな顔だ。まあ、俺も他人からすればモブだろうが、俺からしたら俺が主人公だからな。モブと評するのは許してくれ。


 目は虚で、しかし、怨みという感情だけは確実に伝わってくる。うつ伏せの状態で、顔をこちらに上げて目だけでその意思を伝えてくる迫力だ。



「…………」



 え? この人もしかしてずーっとこの体勢だったの?

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