第421話 ダンジョン
俺は東北東に向けてひたすら前進した。なんの確証もなく、ただただ愚直に歩み続けた。どれくらい歩き続けただろうか、気付くと俺は、ここが何処かすらわからないほど歩いていた。
これだけ歩いたのにも関わらず、見つからないということは、流石にもうこの方角にはないということなのだろう。俺の中ではこちらにある可能性は大だったのにな。やはりそう甘くないということなのだろうか。
もう、ダンジョン探しなんて諦めて帰ろうとした時、俺に一つのある考えが思い浮かんだ。
それは、叡智啓蒙と己没同化を使うことで、周りの情報を取り入れることができないだろうか、というものだ。これを使っても見つけ出せなかったら、もうこの近辺にはないということであるから、そうなったら潔く諦めよう。
「【叡智啓蒙】、【己没同化】!」
久しぶりの感覚だな。だが、余計な情報をなるべく捨てていく。そしてその代わりに範囲を広げるのだ。知覚範囲を広げることができれば見つけられる可能性も上がるはずだ。
「…………見つけた!」
それは、俺から見て、右斜め後ろから感じ取れる気配だった。どうやら、俺は東北東を目指すといいつつ、実際は北東微東に進んでいたようだ。
まあ、確かにしっかり測った訳でもないから、ずれていて当然か。
そして、俺が感じ取った気配の元に行くと、そこにはなんと、禍々しいオーラを放った。どす黒い色の渦が存在した。
なんていうか、まさしく、って感じだな。
ってか、こんなにも堂々と存在してたら誰か気づきそうなもんだけどな。まあ、既に見つかってる所は、それだけで多くの人が集まり、それで情報も広がり、行きやすさも上がるだろうから、どんどん人が増えていくんだろうな。
強くなるには、わざわざ新しいダンジョンを開拓するよりも何倍も効率がいいわけか。
まあ、そんなこと知ったこっちゃねーぜ!
「いけっ!」
俺は決死の覚悟で目を瞑り、その渦の中へと飛び込んで言った。
ーーー称号《迷宮を見つけし者》
称号《迷宮を開拓する者》を獲得しました。
《迷宮を見つけし者》‥誰にも見つかってないダンジョンを見つける。ボーナスSPを50獲得する。
《迷宮を開拓する者》‥プレイヤーで初めて未開のダンジョンを見つける。ダンジョン内にいる時、全ステータス微上昇。
俺が渦の中へと飛び込んだ後、次に見えたのは紫色をした石壁だった。触ってみるとしっかり硬い。
急に異世界に迷い込んだ気分だ。
なんというか、人は見知らぬ場所に来ると、やはり慣れないというか、適応しないというか……
なんかここ雰囲気あるな。
「ヒッ!!」
そこにいたのは、醜い顔をした小さな悪魔みたいなモンスターだった。
グシャッ!!
俺はどうやら反射的に殴り殺してしまったようだ。
べ、べ、べ、別に怖がってないんだかんね!
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