第403話 特製の特性


 あの悪魔こと、この触手のもと持ち主である性悪女悪魔は、確か数え切れないほどの数、触手を展開していたはずだ。それで俺は五本? 


 解せぬ。特訓開始だな。


❇︎


「ふぅふぅ、これでようやく二十本か」


 俺は二十本の触手の制御に成功した、四倍? とびっくりするかもしれないが、案外と簡単な作業だった。まず最初の五本という数、これは一つの頭で制御しようとした限界の数だった。


 つまり制御する頭の数を増やせば良いのだ。そう、分割思考でな。それで四つに分割したんだが、それが一番難しかった。いつもは大抵二つだからその二倍というのは気持ち悪かった。しかしまあ、俺の中で別人格を生み出す感じで分けていくと案外いけた。


 中二病の俺、慎重な俺、頭脳明晰冷静沈着の俺、そして死にたがりの俺、まあこんな感じだな。別になんでも良いんだけどな。そして後はその状態でちゃんと制御できるように調整したらあっという間に二十本完成という訳だ。


 これで心置きなく、


「千手観音!!」


 うむ、かっこいいはずだ。まあ、カッコ悪くても襟巻きとカゲの要領で威嚇はできると思うから、戦闘が面倒くさい時やあ、これ絶対無理だ、って時はこれを使おう。


 あ、いや絶対無理って時は殺してもらった方が得か。


 よし、これで数に関しては大丈夫だな。もっと人格を増やせば数も増やせるだろうし、一人当たりの数を増やそうと思えば増やせるとは思うが、今はまだ良いかな。必要に駆られた時にすればいい。


 最後は特性だな。これが一番謎なのだ。ザックリしていて情報も少なく、だからこそいろんな要素がありそうで心躍る、そんな奴だ。


 例えばどんな奴があるか? 取り敢えず適当にしてみるか。


 巨大化、ふむふむ。壊毒、ふむふむ。硬くするのってなんていえばいいんだ? ガチガチ! おー、できたできた。あとはー、糸!

 ほっそ! じゃあそのまま斬糸、ふむふむ。あ、ネバネバ! おー。あ、防御!へー…………


❇︎


 ゴホンッ、少し夢中になり過ぎたな。思いついたものを片っ端から試していたらあっという間に時間が過ぎていってしまったぞ。やはり童心というものは侮れんな。


 まあ、その分成果はあった。それをまとめよう。使えそうな特性は、


・巨大化…一本一本が太くなる。

・毒…壊毒を先端や全身につけられる。

・鋼…触手をガッチガチにする。

・糸…細くできて、ほぼ見えなくなるまでいける。

・斬…切れ味がちょー良くなる。

・粘…ネバネバする。

・盾…みんなが集まって目の前でスクラム組んでくれる。

・色…カラバリが増える。

・吸血…血を吸ってくれる。


 まあ、このくらいだな。他にもまだまだ使い道はあるのだろうが、とりあえずはこんなもんで充分だろ。まあ、使うかは分からないがな。


 よし、これで触手の使い勝手も分かったな。改めて意外と使えそうだな。やっぱり悪魔のスキルは期待していいのか? 正直字面で決めていたからな、スキルは字面によらぬものってか? ……うるせ!


 ってか、ここに来た本当の目的はスキルの確認じゃないんだよな。まあ、それもあるんだが、別の理由もあるんだ。

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