第398話 竜宿


 色々まだ使ってないスキルがあるからな。それをたくさん試してみよう。


「【龍宿】」


 そう俺が口に出した瞬間、どこからともなく力が湧き上がり、俺の体を変異させていった。おっと、そうだった、たしかこのスキルは形態を選べるんだったな。ただの竜や龍になるにしてもスペースが足りないからな、目の前の悪魔みたく、半人半竜くらいにしておこう。


 このスキル、次使うまでに24時間もかかるんだな。そんなに強いのかよ。だが、まだこれだけで終わりなわけがない。


「【明烏止風】」


 このスキルは確か自分の操作性を上げて、相手の操作性を下げる、みたいな効果だったはずだ。それに付随してステータスもいくらか上がったはずだが細かい所は覚えていない。


「な、なんなのよこれー!」


 ふふふっ、いい感じに戸惑ってくれてるようだな。だが、これであっという間に殺してしまってはつまらないからな。最後の仕上げにあれを使おう。まさかこのタイミングで使うことになるとはな。


「【ぼったくり】!」


 このスキルの怖いところは相手との数字のやりとりの際に、って書かれてあることだ。つまりなんでもいいのだ。当たった時はクソスキルと思ったが、よくよく考えたらいろんなところで使い道ありそうだな。男爵の癖に良いスキルなんか持ちやがって。


「なっ、それはあの男爵の……!?」


「他人の、それももう死んでる奴の心配をお前が今するか? 自分の心配でもしたらどうなんだ?」


 俺は瞬時に詰め寄り、腹部に思いっきりパンチを喰らわせる。しかし、全くダメージは入ってないはずだ。何故ならボッタクってるからな。だが、それはあくまでも数字だけだ。もちろん痛みは入っているはずだ。


「まだまだぁあ!」


 今度は掴んで、思いっきり投げ飛ばす。見様見真似の背負い投げだ。


「カハッ」


 痛いのにダメージ入らないって可哀想だな。だって、生命に関わるから痛みと言う信号を使って警告を出してくれてるのに、その痛みだけきてダメージはほとんど無だからな。うん、可哀想。


 俺は俺の手に伸びている爪を発見し、そのまま袈裟斬りの要領で切り裂いた。爪って便利なんだな。取り回しも楽だし、斬ることも刺すこともできる。意外と万能なんだな。まあ、爪切りはだるいけど。


「も、もう殺して……」


 俺って、家にサンドバッグ欲しかったんだよね。自分の中のイライラやモヤモヤを全部拳に乗せて吐き出せるからな。その点、今回の悪魔戦は非常に楽しい。ぼったくりの新たな使い方を発見できたし、言うことないな。


 でもそうだな、もう殺してと望むのならば殺してやるか。流石に痛ぶるとなるとそれはそれで可哀想だし、転かされた分投げ飛ばしたからやり返せてスッキリしたし、もう良いか。


 最後に、どうせ爪があるんだったらやってみたいことがある。爪をある程度まで伸ばして……



 ザシュッ!



 ……ふう、意外と上手くできたな。心臓抜き取り。

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