第399話 透明なガチャ


 無事心臓を抜き終えた俺は、悪魔の死骸は放置して、そのまま床? 天井?を突き破って薬屋に戻ってきた。龍宿は解除してたからまだ良かったものの、急に人が地面から現れると言うホラーと、その人の全身が返り血やらなんやらで血塗れというホラーの二つを一度に味わわせてしまったな。


 例えホラー好きだったとしても、一つずつ堪能したかっただろう。二ついっぺんにだとどれに反応して良いか分からなくなるからな。頭の処理能力にも限界があるし、店員の婆さんも口を開けてあんぐりしてたぞ。


「すまん、店汚しちまったわ」


 気まづかったから、取り敢えず謝罪の意だけ表明してそそくさと店を後にした。まあ、ご主人が死んだからそんなには怒られないだろう。俺も早いとこ研究所に戻ろう。


❇︎


『悪魔討伐確認、ゲート解除』


 ……ッ、ドス


 ここに来るのも落とされることにも慣れてきたな。今回はギリギリまで地面を引き連れて直前で天駆を発動する、という小技を使ってみた。これは中々面白い。チキンレースだし、メンタルも鍛えることもできるしな。


「おお、戻ってきたか。って、酷い格好じゃのう、それほどまでに苦戦したのか?」


「いえ、少し遊んでおりましたら少し加減を間違えたようです。心臓自体はもちろん完璧に取って参りましたので、お納めください」


「お、おお。いつも助かるぞい。それにしてもいつもよりも綺麗に取れたもんじゃな」


「はい、一撃で仕留めましたからね」


「子爵級を一撃か……本当に恐ろしい剣じゃ。その切っ先が儂の方に向くことだけは避けたいのぅ」


「ん? 何か言いましたか?」


「何も言っておらんぞ? それよりも今し方解析をするから少し待っておくのじゃ」


❇︎


「おう、解析が終了したぞい」


 ふぅ、結構時間が経ってそうだが、意外とそこまではかかってない、意外と解析って終わるの早いよな。


「今回は子爵級悪魔でだいぶ相手も強くなってきたこともあり、中々良いデータが取れてきたわい。いつも感謝しておるぞ。そしてこれがこの悪魔のスキルだな。ほれ」


 巻物を受け取り、すぐに開封した。そして……



ーーースキル【触手】を獲得しました。



 だろうな! なんか戦ってる時からそんな気はしてたぞ? まあ、頑張ってそこには意識を向けず戦っていたけど、やっぱりそうなるよなぁ。ま、まあ効果次第だ。もしかしたらぼったくりみたいに意外と使えるかもしれないからな。


【触手】‥触手を任意の数だけ発生させる。消費MPに応じて、数、太さ、特性を変更可能。長さは決まっているが熟練度に応じて伸ばすことが可能。


 ……うん、なんか可もなく不可もなく、って感じだな。触手って別に使いづらいわけでも弱いわけでもなさそうだ。しかし、めちゃくちゃ強いわけでもカッコいいわけでもないんだよな。


 まあ、あの女のスキルだし期待するだけ無駄だったな。ってか最初の強制進化が有能すぎたくねーか? あれが基準になってるからどれも微妙に感じるのか。これからは少し意識を改めないとな。

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