第387話 思惑と策略(別視点)


「おいおい、んな所に本当につぇーモンスターがいるんだろうな? いなかったら承知しねーからな?」


「まあまあ、落ち着いてください。間違いなくここに強敵のモンスターがいます。ここでまずはアッパーさんの拳装備の元となる素材を確保しましょう」


「おぅ。で、その相手はどこにいるんだ?」


 ズズズズズズッ


「下かっ!」


「アッパーさん、お願いします!」


「うるせー、分かってらぁ!【破砕拳】!」


 表面上では魔法使いウィズに対して噛み付いているアッパーだが、その実力は折り紙付き。最近のパーティ活動で更なる力を身につけたアッパーは最高のタイミングで、地中からの来訪者に対して、一撃をお見舞いした。


「グォオオオオ」


 そのモンスターは奇しくも、主人公が帰らずの塔の第三回で倒したゴーレムだった。主人公はこのゴーレムらに何度かいや、何度もやられていた。しかし、どうやらこの二人は違ったようだ。


「ウィズ!」


「いきますよ、【鎖縛魔法】、鎖縛匆々」


 その言葉によって紡がれた魔法はその詠唱者の手元から鎖を発生させ、瞬く間にそのゴーレムを捕縛してしまった。しかも、鎖というかなりの強度をもった媒体かつ、全身グルグル巻きとまではいかないものの、確実に要所要所を的確に縛っているため、ゴーレムは動こうにも動けないようすだ。しかも、魔法的効果も発動している。


「貰ったぜ、しゃおらぁっ!」


 完全に動きを封じられたゴーレムに対して、アッパーは弱点となるコアを全力でブチ抜いた。


 ガラガラと音を立てて崩れ落ちるゴーレムを満足そうに見ているアッパーを尻目に魔法使いウィズは少し不穏な動きをしていた。


(【鎖縛魔法】、迅鎖略刃。ふふっ、これでお目当てのゴーレムは確保できましたね)


 アッパーが巨大なゴーレムが崩れ落ちているのに目を奪われている隙に、ウィズは目にも留まらぬ速さでもう一体の漆黒のゴーレムを捕まえた。いや、倒して素材をゲットした、という方が正確だ。


 このゴーレムは主人公が服従をしようとして失敗したゴーレムで、主人公を苦しめた張本人とも言える。大きなゴーレムに注目させて黒いボディで暗殺者のように相手の命を狩る、そんか身軽なゴーレムなのだ。


 しかし、身軽なゴーレムということはとりも直さず、体が小さいと言うことであり、それは素材の取り合いを意味することとなる。


 つまりウィズは、一人では手に負えない相手に対して、アッパーの力を借りたのだが、美味しい所は一人で確実にもっていった。この強かで狡賢いウィズの策略が果たしてどこまで通用するのか、はたまたその目的はなんなのか、


 まだ知るものは一人としていない。

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