第363話 密


『かしこまりました。……ヴェノム』


 デトックスがそう唱えると、デトックス自身は殻に籠り、その後、殻の隙間から毒ガスをプシューと噴射し始めた。あいつ自身は殻に籠もっているから防御も完璧でなおかつ毒ガスで攻撃もしている。まさに攻防一体の技である。


 この技は一見完璧に見えてしまうが、攻撃手段が毒ガスであるため外で使うのはあまり好ましくない。何故なら密じゃなくなり、相手とディスタンスを取られてしまうからだ。密閉空間で相手と密接している、正に洞窟内などで猛威を振るうう技だな。


 毒ガスはどれくらいでていただろうか。もう、発生自体は終わっているのだが、かなり残留している。まあ、ほぼ密室だからそれもそうか。そしてその毒ガス、毒霧が晴れた時らそこにあったのは……


 サソリの亡骸だった。


『デトックス! お前強いな、一発とはやるじゃねーか! それに、毒だけで倒したってことはこのサソリよりも毒が強かったってことだからな。かなり強くなったようで、俺も嬉しいぜ!』


『ありがたきお言葉。これも一重にご主人様のお力によるものです』


 あー、うん確かにそうだな。これまでは俺がかなり手伝ってあげてたからな。だがこれからはしっかりと自分の力で強くなっていけるはずだ。だから、


『お前は相手を倒したら必ず相手を食べるんだ。相手の毒と自分の毒を親和させて、更なる深みをだすんだ。なんなら、相手の毒だけでなく、全ての体、目や鼻、脳味噌や外骨格、全部をお前の毒に合わせて強くするんだ。そうすればお前は相手を倒せば倒すほど強くなれる。分かったか?』


『承知いたしました。精進いたします』


 しかし、一発でサソリをやるとは思わなかったな。そこまで強くなっていたとはなー。死闘を繰り広げるかと思っていたのだが、案外あっさりだったからな、次はもうちょっと強い相手と戦わないとな。


 よし、次は……キングサーペントだな。図鑑の写真を見る限りサイズ感は伝わってこないのだが、説明文には超絶巨体、と書かれてある。これは、かなりの強敵になりそうだな。こいつにどうやって戦い、倒すのかきになるな。


 生息地はこいつも第五の街だな。ん? 洞窟って書いてあるから、恐らくこの先だな。ってことはまず間違いなくサソリよりも強いってことだろう。洞窟のボスか何かだろうか。これはデトックスに頑張って貰わないといけないようだな。


 蠱毒の時にもヘビはいたのだが、体長1.5メートルという小さい、特殊なヘビだった。だが、今回はガチガチのヘビだ。それも大蛇、毒のエキスパートと言っても過言じゃない、それこそ権威のようなものだ。そこにこのデトックスという名のカメが挑むというわけか。どうなるんだろうな、どれくらいの強さかさっきは計れなかったから、今回は頼むぞ。


 よし、というわけで俺は洞窟を進んでいく。


 ん? ちょっと待てよ? サソリを倒したら出るっていう手筈じゃなかったか? なんで俺また洞窟を進んでるんだ? しかも奥に向かって、俺何してんだよー!


 もう、いいや、最速で到着して速攻でデトックスに倒してもらって、最短で帰ろう。


 ん? 洞窟が怖いのかって? な訳ねーだろ。密を避けてるんだよ!

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