第360話 デトックスタイム


 デトックスの使える技は四つだけ。強化しようと思ったら技マシンを使うか、レベルアップを目指さなきゃいけないんだが、本当に四つまでしか覚えられないのだろうか。とりあえず、技の強さを考慮してから考えよう。


『デトックス、俺に毒の牙を使ってくれ』


『わかりました』


 カプッ


 うん、痛くもないし痒くもないな。これは良くない。せめて俺を殺せるだけの毒は用意しておいて欲しいな。


 これはもう、大幅強化計画のスタートだな。


 まず最初は、俺が作りうる最大の毒を耐えられるようになって、その上でそのレベルの毒は扱えるようになってもらおう。その場に適当に穴を掘って、毒殺料理人の職業の力で調合出る中での最大の毒を生成する。


 そういえばこの毒ってどこからきてるんだろう。元手なしだからわりと強くないか?


 そして毒のプールが完成したらそこにデトックスに入ってもらう。湯加減はどうだろうか。余裕で耐えられるのならばすぐに次の段階にいかなければならないのだが……


『どうだ? きついか?』


『うぅ、これは少々体にきますね。流石にもう、体がもちま【慈愛之雨】」


 良かった。ちゃんと毒が効いているようだ。しかし俺は従魔に対して何をしているんだろうか。ほとんど拷問のようなことをしているのではないか? まあ、毒のスペシャリストになって欲しいから、毒のキツさも身に染みて分かって欲しいというものもある。


『あ、そもそもどういう感じなんだ? 毒の中にいるってことは』


『はい、私たち毒を扱う生物にとっては毒の中にいるということは最上位の喜びです。ですから、とても気持ちが良く、快感すら覚えるのですが、ご主人様の毒はさすがでございます。些か私めには強いように【慈愛之雨】」


 デトックスが死にそうになるとしっかり回復させる。回復魔法がこれしかないからこれをひたすら乱用しているだけなんだが、それでもまあ十分回復できているようで良かった。


 それに、毒の中にいることは最上の喜びなんだってな。それで快感を覚えるってどういうことだよ。まあ、拷問になっていないようで良かったが、これに慣れてしまえば、もうこれ以上は俺の力では無理だからな。今の内に感じて欲しい。


 そしてその後も何度か慈愛之雨を発動していると、


『ご主人様、幾分か慣れて参りました。今ではとても心地良いです。粋な図らい、誠に感謝申し上げます』


 こんなことを言われた。別に感謝されるようなことはしてないんだけどな。まあ、される分に損はないし、ありがたく受け取っておこう。


『おう、良かった。ダメージを食らわなくなったらまた教えてくれ』


『かしこまりました』


 その後もデトックスの毒浴タイムは続くのであった。


「従魔:ポイズニシャンタートル、個体名:デトックスが ヴェノマスタートルに進化しました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る