第355話 優勝予想


 緊張の瞬間だ。今はまだ仕切りで区切ってある状態だ。俺が捕まえに行っている間に、従魔たちが頑張ってくれたようだ。まあ、ハーゲンはそんなにらしいが。


 仕切りは、燃えやすい木でできているらしい。つまり、開戦の合図はド派手にかましていいということだ。では始めようか。


「ボム」


 着火するまでは俺の視界には何も映っておらず、導火線の役割のものしか見えてなかった。しかし、その導火線に火をつけると、一瞬で燃え広がり、壁がなくなった。そして、そこに登場するのは六体の戦士達。この光景を目にしてしまった俺は、


「カッケー」


 素直に声が漏れ出ていたようだ。それほどまでにかっこよかった。まるでアイドルの登場シーンのような、それでいて荒々しさや闘う者の雰囲気も纏っている。良い、間違いなく雰囲気は良い。さて、ここからどうしてくれるのだろう。


「お」


 一番最初に動き始めたのは機動力に優れた極短極太ヘビだった。隣にいた敵に対してノーモーションで飛び出して行った。しかし、そこにいたのは同じく機動力重視のドデカバッタだ。こちらもあらぬ方向を向いていたのにも関わらず、軽くジャンプするだけでその攻撃を避けてしまった。


 しかし、そのバッタの飛んだ先は、不運にも口を大きく開いたワニが待っていた。バッタは慌てて羽を広げ方向転換を試みるが、所詮バッタの羽はバッタの羽だ。そこまで大きく回避することができず、羽に噛みつかれてしまった。


 そしてバランスを失ったバッタはそのまま墜落していくのだが、これも不幸が重なったようだ。そこは、正しく百足の尻尾の先だった。バッタが気付いて行動するよりも早く、百足の尻尾が牙を剥いた。いや、牙ではないか。


ーーー脱落 ドューベンローカスト


 ものの数分で六体から五体に減ったのだが誰も気にしていない様子。一目みて周りが敵だと察したのだろうか、それぞれがそれぞれに対して意識が向いている。


 次に動いたのは、またしてもヘビだった。今度は、次に反対側の近くにいた、牛に対して飛びかかったのだ。


 しかし、それにたいして牛はその体躯には似つかぬ機敏な動きで、ヘビをヘディングの要領で頭突きを繰り出した。その頭突きによって弾き飛ばされたヘビはそのまま百足の口元に吸い込まれるように飛んでいき、


 ガチン!


 強靭な顎に一刀両断された。


 こときれたヘビには一目もくれず、残っている者たちは見つめ合う。まるでこれからの壮絶な戦いを予感させるかのように……


「うん」


 なかなかに見応えのある、戦いだ。まるで特撮でもみているかのようだ。特大というほどでもないが、かなり大きなモンスター達が一斉に戦っている様はかなりの圧巻だ。これからどうなっていくのか非常に楽しみであるな。


 それはそうと、一体誰が優勝するのだろうか。俺の予想だとウシだな。百足に対しては側面から攻撃できるし、ワニに対しては機動力で勝ってそうだ。だが、まだ始まったばかりで何も分からない。これからの攻防に注目だな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る