第352話 ポイズニスト


『触るな危険! 超凶悪毒モンスター図鑑』


 結局これを買うことになった。俺のあの苦闘は何だったのだろうか。今更また読んで頭に入れ直そうとも思わないし、それをしてもどうせまた覚えていないのではないだろうか。


 そんな訳でこの本を買ったのだが、やっぱり持ち運べるってのがいいよな。いつでも見れるし、最初からこうするべきだった。本当に。


 よし、もう切り替えよう。無駄なことに時間を費やしたくないからな。


 今から毒モンスターを倒しに行く訳だが、そうだな、ランダムにページを開いてそこのモンスターを倒しに行くか。


「よし、ここっ」


 適当に真ん中あたりを開いた。そこには……


・ポイズニストタートル

第五の街、渓流付近に生息。強力な毒牙を持っており、噛まれると危険。さらに攻撃を加えることで殻に籠もってしまうが、すぐに毒液を噴射して回転し始める。この生物を見かけたら、問答無用で逃げるべし。何もしなければ大人しい性格をしている。


 おいおい、ひどくそのまんまな奴がやってきたな。ポイズニストって何だよ、ポイズニストって。まあいい。それよりも、第五の街に生息してくれていることが非常にありがたい。今すぐ街の移動なしで向かえるからな。


 街から西に向かうと、そこには渓流があった。綺麗な景色だ。現実世界で渓流って何気に見たことがないような気がする。定義自体が俺の中で曖昧だしな。


 まあ、きれいな水が流れていればいいのだろう。それにしてもこんな清らかで空気も美味しい場所にポイズニストなんているのか? 最も嫌いそうな場所なんだが……


「いた」


 探そうとした瞬間に見つかった。なんなら目すら合った。しかもその体がいかにも毒々しく、ポイズニストだと一眼で分かったのだ。


 体の色は、紫も入っているのだが、どちらかというと緑と黒を混ぜたような、ヘドロのようなそんな色をしている。所々紫の斑点もあるって感じだな。


 って、どうしようか。蠱毒をしようとは思っていたのだが、どうやってやるべきか。その名の通り壺を買ってきてもいいかもしれないが、どう考えてもこの亀は入らないぞ? それに亀ってどちらかと言えばモンスターの中では小さい方だろう。


 仮に戦わせる場所があったとしても、一時待機所みたいなのがないと、参加者達はどこに置いておけばいいのだろう。殺し合いをさせるのに服従を使うのもおかしな話だしなー。


 そうだ。場所に関しては俺が穴を掘ろう。俺、炭鉱夫のスキル持ってたから穴掘りは得意だ。なんならダイナマイト方式を採用してもいいしな。そしてその場所に柵みたいなのを用意して、モンスター達を待機させて数が溜まったら、GOって感じだな。


 よし、ならさっさと始めよう。


 それにしても立地が大切だよな。あまりにも目立つところではやりたくないしなー。地盤的に大丈夫なところで、しかも地下施設がないところでしなきゃだから、そうだなー。人目につかない場所と言ったら、あそこか。


 バッシャーン!


 そう、海だ。

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