第346話 料理人の可能性


 熊肉の魔カレー、俺が適当につけた名前だが案外良い感じだな。カレー自体も悪くはない。熊の旨味が他の野菜たちに染みわたり、キノコとも絶妙なコンビネーションを発揮している。味見した限りでは悪くなかったはずだ。


 この料理を作る上で苦戦したことは、スパイスだ。スパイスを取り扱っている店を探すのに一苦労したのだが、なんとか見つけられた。暗殺ギルドの受付の人には感謝しないとな。


 婆さんの目の前に提供すると、婆さんは外見を見て、匂いを嗅ぎ、その後で一口食べた。そして、


「いひひひひ、面白い料理だし悪くはないねぇ。ただ、熊とキノコが喧嘩している、ねぇ」


 婆さん曰く、熊肉の時点でその旨味を十全に活かすために、スープ料理にするのはよかったそうだ。しかし、どうもキノコを入れるタイミングが早かったようだ。


 俺の考えでは、熊とキノコ両方から出汁を取ろうと思っていたのだが、それがマズかったらしい。キノコは風味と食感を際立たせるために最後に入れるべきだろう、と。そうすることでキノコの良さが十分に活きるんだとか。


 ここまで丁寧に解説してくれるのはありがたい。何が悪くて、何が良かったのか、しっかり言ってくれる。ただ、褒めるだけでもなく、悪いところだけを言うのでもなく、一番良い指導法だな。


 俺の親は俺の悪いところしか言ってこなかったからな。こっちの方が何倍も頑張れるってもんだよな!


「ありがとうございますっ!!」


 そうして、俺の修行はどんどんと進んでいった。婆さんの有り難い言葉をもらいながら、一品作るごとに成長している感じが分かった。


 ❇︎


 初めてここにきた時からすると、どれくらいの月日が流れただろうか。もう現実世界ではすっかり季節も変わった気がする。何気ない気持ちで始めた料理だったが、やればやるほどその奥深さというものを身に染みて感じるようになった。


 俺なんかがちょっとやそっとで極められるものではないが、ゲームという世界の恩恵を受けることによってその世界の一端を垣間見ることができたように思う。


 俺の料理人生はここからがスタートだ。



ーーー称号《上級料理人》

   称号《毒殺婆の愛弟子》

   称号《料理人の真髄》

   称号《気高き料理人》


「《中級料理人》は《上級料理人》に統合されます」


《上級料理人》‥多くのレシピを自分で考案し、人に食べさせる。スキル【料理】を取得する。


《毒殺婆の愛弟子》‥毒殺婆に認められる。料理に毒性を盛り込んだ場合、その効果を上昇させる。


《料理人の真髄》‥人に料理を与えて、心の底から喜んで貰える。料理完成時に、効果、味に補正。


《気高き料理人》‥ステータスを一切振らない状態で上級料理人に至る。料理完成時に効果補正。料理人の新たな可能性を切り拓く。



「料理、に関する称号が一定数を超えました。料理人、が第二職業として解放されました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る