第344話 食
「今日からはこれからは実戦的な料理に入っていくねぇ」
とうとう実践的な料理だ。前回はこれの途中でまた振り出しに戻ってしまったからな。今回からやっと中級料理人への道へと歩を進めることができる。気張っていこう。
「まずは焼き料理だねぇ」
その言葉から始まった修行はスープ作りとは一線を画した難易度だった。
まず、それぞれの食材の適度な焼き加減を知り、そこから他の食材とのコラボでもその適切な焼き加減を維持する。そして、料理によってはしっかり焼く食べ物と少しでいいもの、その加減など、しっかりとしたゴールがあったスープとは異なり、常に臨機応変に最善を求められる工程だった。
この時、思わぬ伏兵となった要因が、暑さだ。四六時中フライパンを振り続けているのでめちゃくちゃ暑い。いつもは変温無効があるので気にも留めていなかったが、こういったところでもスキルの恩恵を感じさせられる。
焼くことがある程度できるようになると、次は煮込み料理だ。煮込みはスープに似ている、と思っていたのだがこれもまた奥が深かった。
煮込むということは、ただスープを作るだけとは違って、味付けとその味の染み込み具合、水分量、そしてそれらの比率。考慮しなければならない変数がかなりの量になってくるのだ。
スープの場合は基本的に時間が鍵となっていたがらそれどころの話ではなくなってくるのだ。常に感覚を研ぎ澄ませ、全ての匂い、音、見た目に気を使って調理していく。
常に気を配り続けることで、料理を構成する要素、に気を配ることを覚えた。美味しい料理と一言でいっても、それは何がどう美味しいのか、美味しいと感じさせるのか、そういったものを考えることで料理の本質的なものについて考察を深めることができた。
個人的には、匂い、音、見た目、そして味が料理を構成するものだと思っているが、これからの修行のあいだにこの考えも覆ってしまうかもしれない。
それも含めての修行だし、料理だな。
お次は蒸し料理だ。蒸すのも難しいが、煮込み料理とかなり共通してる部分があった。水分量、時間などだな。それらに加えて温度や蒸す対象の状態などがあった。
蒸し料理は、煮込み料理とちがって、少しの時間で大きな結果の違いをらもたらす。かなりシビアなのだ。一分の違いで風味や食感が変わってくるためそこを見極めなければならない。
また、途中で具合を確認することも難しいことから、ひたすらにトライアンドエラーを繰り返すことになった。そもそもの料理時間も相まって、この作業がもっとも時間がかかった工程だっただろう。
最後は揚げ料理だ。揚げ物もなかなか難しかい。揚げる温度や時間、回数、さらには油の種類までを徹底的に叩き込まれた。こちらの世界では多くの種類の油があるため、非常に覚えるのが困難だった。
全てを習得するまでにどれほどかかったのだろうか。およそ一ヶ月はかかっているとは思うが、非常に長かった。だがその分得るものも多かったように思う。
それに改めて婆さんを含め、母親などの現実世界の料理人の苦労とその凄さを知った。これから現実でも食事をする時は必ず感謝の気持ちを忘れずに食べたいと思う。
ーーー称号《中級料理人》
称号《食への感謝》を獲得しました。
「《下級料理人》は《中級料理人》に統合されます」
《中級料理人》‥調理方法を理解する。料理完成時に味と効果補正中。
《食への感謝》‥食事に対しての感謝の念を高める。料理の味と効果、微補正。
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