第335話 入門


 食死処、甘美なる最後、だって? なんだそりゃ。ここは美味しいレストランじゃないのか?


「いひひひ、面食らった顔をしているねぇ。ここはもう将来に希望を持てなくなった人が集まる場所だねぇ。お前さんもそうかと思ったんだが、どこか他の人とは違うようだねぇ。お前さん一体何者なんだねぇ」


 なるほど、なるほど。だから食死処なのか。ん? ってことはここの料理を食べると死ぬってことか? あれ、俺は死んでいないんだが。


「ん、ってことはここの料理を食べたら死ぬんだよな? この料理には何が入っているんだ?」


「いひひひひ、その料理にはトロギア・ヴェネナタとレピオタ・プルニオインカナタの二つと、ゴンズイのアラから出汁をとったスープにエンジェルピッグの骨を煮込んだものを混ぜ合わせたものと、カエトゥス・ラピを麺にしたものだねぇ。それぞれの素材の味が生きているからそのままでも美味しいんだねぇ」


 何を言っているいるのかさっぱりだったが、とりあえずいろんな食材達を使ってこれだけの美味しい料理ができている、ということが分かった。どうやって殺しているのかは、おそらく毒でも盛り込んでいるのだろう。


 よし、もうここに決めよう。俺はこの婆さんのもとで修行をする!


「婆さん! 俺はあなたの味に感動しました! 是非私を弟子にして下さい!」


「いひひひ、何を言うかと思ったら、弟子かねぇ。もう、私は引退した身、他を当たるんだねぇ」


 く、やっぱり一筋縄ではいかないか。だが、ここで諦めていてはダメだ。諦めは肝心だというが、そんなのは愚者か歯医者じゃなくて敗者の言い訳だ!


「お願いします! どうかこの通り! その為にならなんでもします!」


 そう言って俺は婆さんに向かって深々と頭を下げた。どうにかこの熱意を届けるんだ。熱意が届けば必ず人は分かってくれる!


「いひひひ、そこまでいうなら分かったねぇ。ただし条件があるねぇ。私は技術は教えてあげるけど、食材は自分で用意するんだねぇ。それさえできればいいさねぇ」


 よっしゃ! 遂に来た! やっぱり熱意は人を動かすんだ!!


「ありがとうございます! もちろん食材は自分で用意します!」


「じゃあ、早速食材を持ってくるんだねぇ」


「はいっ!」


 こうやって俺の料理人への道がスタートしたのであった。




ーーー称号《駆け出し料理人》

   称号《毒殺婆の弟子》


《駆け出し料理人》‥料理の道を志して、料理人のもとに弟子入りする。食材、及び可食部位が分かるようになる。


《毒殺婆の弟子》‥毒殺婆メアリーの弟子になる。食材及び可食部位ではなくても調理可能になる。



❇︎



「婆さん! 俺はあなたの味に感動しました! 是非私を弟子にして下さい!」


「いひひひ、何をいうかと思ったら、弟子かねぇ。もう、私は(もう毒殺からは)引退した身、他(の暗殺者)を当たるんだねぇ」


「いひひひ、そこまでいうなら分かったねぇ。ただし条件があるねぇ。私は(料理の)技術は教えてあげるけど、(殺す用の)食材は自分で用意するんだねぇ。それさえできればいいさねぇ」


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