第336話 修行開始
「婆さん! 食材を持ってきましたよ!」
俺が持ってきた食材は、現実でいう玉ねぎ、にんじん、ジャガイモ、そして豚肉だな。とりあえず野菜は八百屋っぽい所で買ってきたのだが、豚肉は前に水操作で殺したイノシシが食用に使えそうだったから、それを代用した。
「いひひひひ、可愛いのを持ってきたねぇ。最初は切り方から教えようねぇ。まず基本的なのは千斬り、微塵斬り、だねぇ。これは何も考えなくてもできるねぇ。まずはこれをしてみるんだねぇ」
「はいっ!」
何故か切り方の名前が物騒に聞こえるな。流石に気のせいだろう。それよりも早く実践だな。習うより、慣れろってね。因みに包丁とかの器具はここのものを借りている。本番ではしっかり自分のを購入しないといけないな。
「いひひひ、悪くはないねぇ。物を切り慣れているのが伝わってくるねぇ。そしてまずは切り方を全部覚えるところからだねぇ」
そこから俺の激動の修行生活が始まった。最初は切り方を覚えるだけだと思っていたのだが、甘かった。切る上でまず名前と切り方をセットで覚えることはもちろん、そこから、スピード、形、薄さ、それぞれを全て完璧になるまでひたすら切り続けさせられた。
ただ食材を切るだけでもこれほど大変とは、料理の世界を俺は舐めていたようだ。まだ調理にも入っていない、いわばスタート地点にすら立っていないのだ。だが、旨い飯というのはこの努力の上に成り立っているのだろう。
そしてどれだけの歳月が経っただろうか、まあそんなにいうほどの年月は流れていないだろうが、遂にその時がきた。
「いひひひ、これならもう大丈夫だねぇ」
「あ、ありがとうございますっ!」
これを持ってして俺は切り方数十種類をマスターしたのだ!
ーーースキル【斬法十四手】
称号《見習い料理人》を獲得しました。
「《駆け出し料理人》は《見習い料理人》に統合されます」
【斬法十四手】‥料理における食材の切り方を如何なる剣でも使用可能となる。切り方を覚え次第使用可能な技も増えていく。
《見習い料理人》‥切り方を十種類以上マスターする。料理時の手際に微補正。
なんか物騒なスキルも一緒についてきたんだが、これで晴れて見習い料理人かー。でも、切り方だけでこれほど時間がかかるなら、一流になるまではどれくらい時間がかかるんだろうな。果てしなく感じるけど、一歩ずつ頑張るしかねぇな!
そういえば不気味な称号があったんだけどあれは気にしないでおこう。なんか気にしたら負けな気がする。
「次からは実際の調理に入っていくねぇ。まあ、明日は休みにするからゆっくりするんだねぇ。いひひひひ」
「わかりました! ありがとうございます!!」
連日続いた修行だが、ここで急遽休日をもらった。だがこの休日の本当の意味を俺は知る由も無かった。
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