第333話 俺の戦略


 え、ここは王都なのか? ハーゲンで移動しているとほとんど瞬間移動だから景観のクソもないんだよな。だからここが王都なんて気付く余地もなかった。いつもは観光というか街の雰囲気を軽く観る、くらいはしてたんだがな。仕方が無い。


 しかも更に衝撃的なことも言われたな。Aランクじゃないと入れないってマジかよ。俺が今Bランクってことも忘れていたが、また一つランクを上げないといけないのかよ。面倒臭いがあいつを一泡吹かせる為にはやらねばならぬことだ。


「貴重な情報ありがとうございます。ところで私がAランクになろうと思ったら、あとどのくらいの依頼をこなしたらいけそうですかね?」


「え、んーそうだな。そもそもAランクっていうのはそういう風になろうと思ってなるもんじゃねーんだが、だいたいでいうと、依頼は百以上はこなさないとダメだな。ま、正確には依頼の数じゃなくてどれだけギルドに貢献したか、という基準だから、俺もはっきりとは言いづらいな」


「そうですか、ありがとうございます」


 これだけの情報を聞けただけでも価値があるな。今から目指そうとしていたら、いつになるか知れたもんじゃない。それに、貢献度とか曖昧なもんなら、ランクアップする時に話し合いとか行われて、時間を取られたりするかも知れない。


 つまり、何が言いたいかというと、俺はランクアップは目指さない。もう直接直談判しに行く。そっちの方が百倍早いだろう。


 どうせAランクに上がったとしても、それはレストランに入れる資格を手にしただけだ。それは俺が望むものではないからな。俺はあくまで作る側の技術が欲しいのだ。それさえ手に入ればいい。


 よし、早速方針が決まったら行動開始だな。


 行動開始といって、今すぐレストランにカチコミしようとした奴はアホだな。そもそも入れないのに、そんなことをしたら門前払いだし、そこで駄々をこねたら最悪門番行きもありそうだ。だからそれは絶対にしない。


 次に、隠遁を使って忍び込もうと思った奴、まあ悪くはない。ただ、それでどうするのかっていう話だ。仮に厨房で姿を現したとして、相手は仕事中だぞ? 速攻で外に出されるだろうし、先ほど同様印象が悪い。


 あくまでも教えられる立場、印象は下げてもいいことはない。


 そこで俺が取る行動は、休日戦法だ。一流レストランのシェフともなれば、休日もレストランに籠もって仕込みや新しいメニューの考案とかをしているだろう。そこに俺が突撃して、話を取り付けるのだ。


 これで間違いなくいけるはずだ。うん。ところで休日っていつなんだ?


 よし、王都の場所も知らないし、とりあえず観光も兼ねて実地リサーチとでも行きましょうか。何も分からないんじゃ始まらないしな。


 ハーっ、ゲンに頼ってしまうと一瞬で着いちゃうから、観光にもならないな。現地の雰囲気を直に味わう為にも、俺が自分の足を使って行きますか。


「【韋駄天走】」


 あっ、ってかどっちに行けばあるんだ? いつもはハーゲンの上だから俯瞰的な視点があったから迷わなかったんだが、今回は俺が地上にいるからどうしようもない。


 俺は道に迷った時に必ず取る行動がある。それは止まらないということだ。


 常に動き続け活路を見出す。止まってたら永久に抜け出せなくなるからな。だから俺は止まらない。



 ……ここはどこだ?

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