第328話 オート


ーーースキル【嘔吐無効】

   スキル【塩分不要】

   スキル【水操作】 を獲得しました。


【嘔吐無効】‥嘔吐しなくなる。


【塩分不要】‥塩分が体から無くなる。状態異常:塩分不足を無効にする。


【水操作】‥自分が触れている水分を自在に操ることができる。自分の体から周囲2センチまでが操作可能。熟練度に応じて操作領域拡大。


 おお、やっと終わりだ。きつかったなこの作業は。死ぬまでに時間かかってその間ずっと気持ち悪いし、終わりが全く見えないし、水も美味しく感じ無くなるしで、災難だった。


 もう、途中から水を飲んでいるのか、飲まれているのか分からなくなるほどだった。まあ、その分得るものもあったし良かった、ことにしよう。


 スキルを確認するか、全部で三つ獲得したようだ。一つ目が嘔吐無効、うん、これ使う場面これからくるのか? 確かに嘔吐しなくなるのは有り難いし、現実でもらえるのならば貰いたいが、このゲームにおいては今し方俺が行っていた方法以外で吐く未来があまり想像できないぞ。


 嘔吐させる魔法を使える敵が現れるとかか? それもそれで嫌だな。そんな敵運営側も作るんじゃねーよ。あ、でももしかしたらずーっと自分の体を回してくる敵がいるかもしれないな。ひたすらに回転させて、酔わせて吐かせる。これならワンチャンある……のか?


 でも、それでいうと状態異常で酔いみたいなのがあって、それで吐かせるのはありそうだな。まあ、それならまだ使い道が考えられる時点でマシだな。


 だが、次が問題児だな。なんだよ塩分無効って、どのタイミングで使えっていうんだよこれは。状態異常、塩分不足とかもはや熱中症だろそれ、しかも体の中の塩分を無くしてくる魔法とか攻撃があるのか?


 これも現実世界でなら欲しいぞ? 熱中症や水中毒、さらには塩分の摂りすぎである高血圧も防ぐことができるからな。ただ、ただ、この世界には必要ないだろ。もしかしたらこの世界にも高血圧はあるのか? あるとしたらそんな世界嫌だなー。


 まあ、いいか。これから何かの機会に役立つかもしれないし、そもそも目的は死に慣れることで、ステータスアップもできてるんだ。そんな高望みは良くないな。それに最後のスキルはいい感じだしな。


 ラストは水操作だな。唯一これはなんとか使えそうなスキルではあるな。ちょうど湖の中にいるし、早速試してみるか。まずは水を掬って落ちないようにしてみよう。


「おー!」


 普通だったら絶対に零れていくはずなのに、面白いなこれは。じゃあ次は足の裏を固定してみるか。


「おおーー!!」


 すごい水の中で立っている感覚があるぞ、これは変な感覚だな。ん? ってことはもしかしてあれができるということなのか?


「おおおーーー!!!」


 俺は今なんと水の上に立っているこれは凄い! これで俺も忍者の如く水上を走れるぞ! 男なら誰しもが憧れるからな、でも現実じゃ絶対不可能だから、これは嬉しい! これをできるようになっただけでもさっきの死は価値あるものだったな。


 バシャバシャバシャッ!


 一通りこれであそんだ俺は更に面白いことを考えた。それは自分の体内の水分を自在に操ることができるのではないか、というものだ。もしかしたらそれをすることで体をうまく動かせたり、代謝とかをあげられるのではと考えたのだ。


 体の全身をイメージして……


「うぇ」


 体の全身をイメージしようとしたら、頭を使ってしまって、その結果頭の水分をかき混ぜてしまった。気持ちが悪い。吐きそうだ。でも、俺には嘔吐無効があるから吐けない。吐いた方がまだスッキリしそうなのに、吐けない。気持ち悪い吐き気がずっと続いている。


 やっぱ嘔吐無効は使えねえじゃねぇかよ。

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