第329話 ケチで怖い
悔しい、俺は今非常に悔しい。何故ならあんなに苦労した水中毒なのに、ゲットできたスキルがイマイチだったのだ。嘔吐無効はもしかしたらと思ったが、すぐに期待を裏切られ、塩分不要は用途不明、水操作は唯一水上走りができてかっこ良かったが、俺の少しの操作ミスで気分が悪くなったからプラマイゼロだ。
しかも、嘔吐無効と水操作が手を組んで、気分は悪くなって吐き気はするのに、吐くことができないという、超害悪寸止めプレイをされたのだ。これは許せん、許せんぞ。
というわけで、なんとしてでもこのスキルを使えるものにして、俺が失った分いや、元を取りたい。正直、嘔吐無効と塩分不要には期待していない。もうこいつらには活躍できる未来が見えない。だからこそ、水操作、お前しかいない。どんなスキルでも使い方次第では化ける、はずだ。いや、化けさせて見せる。
よし、まずはスキルについて完全に理解することから始めよう。スキルの良さを引き出すには知ることから始めないとな。
「ふむふむ」
二センチって意外と短いな、水球を作ろうとしても直径二センチの球なんて何に使えるんだ? いや、球じゃなくてもいいよな、針みたいな形にすれば少しは殺傷性を加えられるか? よし、超極細で激短な針だけど、取り敢えずこれを湖のそばにある木に向かって投げつけてみよう。
ビシャ
うん、だろうなそんな気しかしなかったぞ。ただ濡れただけじゃねぇかよ。まあ、あれだけ小さかったらそうなるだろうし、手から離れた時点でただの空飛ぶ水溜りとなんら変わりはないもんな。よし、水を飛ばすという方向性はなしだな。
そうなってくるとどうやって活用すればいいんだ? もういっそのこと思いっきり方向性を変えてみるか。つまり、攻撃じゃなくて防御に切り替えるってことだ、まさしくこれが、コペルニクス的展開ってやつだな、知らんけど。
体から離れた瞬間水溜りと化すのならば、常に体に纏わせておけばいいのさ。
「ウォーターアーマー! なんつって」
おお、意外と形にはなっている。ただ、体から二センチだから俺が着用している装備から完全に隠れてしまっている。しかも手や顔などの露出部分は逆に見えているから超ダサそうな格好になっている。うん、これは却下だな。実用性がなさそうだし、何よりダサい、これは嫌だな。
そもそも水を防御に使うって相当な厚みがあるか、凍らせるかしないと効き目なさそうだよな。最悪津波みたいにしてぶつけられればいいんだがそれすらも不可能だ。防御は断念だな。
だが、沢山の思考錯誤によって方向性が見えてきた。体から離すことなく攻撃に使うことさえできればいいってことだよな。ん? つまりどういうことだ? 体から二センチしか展開できないんだぞ? だから剣みたいに使うこともできない。
やっぱりこのスキルもクソスキルなのか?
いや、まだ諦めない。諦めたくない。何か使い道があるはずだ。ちょっと視野が狭まっている気がするな。一旦引いてみて考えよう。水といえば? 飲み水、そう飲み水だよな、でもそれは相手を攻撃することはできない。いや、本当にそうか? なにかそこに毒でも混ぜて飲ませることができれば……
誰が敵からの水を素直に飲むかよって話だなこれは却下だ。でも、何か近付いている気がするぞ。水を使って人を攻撃、もしくは殺す方法……
「あっ」
溺死があるじゃねーか! そうだ、溺死だよ溺死! 俺も何度も経験したことがあるじゃんかよ、しかもここで! なるほどな。そして、溺死を狙うなら攻撃の要素も手から離れないっていうことも満たせるな!
だって俺の手で相手の顔を鷲掴みにすればいいだけだからな!
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