第310話 拳と拳の抵抗


 とうとう準決勝か、総勢十名しかいないから、俺は一回勝てば準決勝だし、その下の山でも二回勝てば準決勝なんだよな。そう考えると、なんか微妙な気持ちにもなるが、まあそんなことは気にしてられない。俺は優勝しか見ていない。


 ってか、まあ優勝できるならするだろうし、できないなら無理だろうから、今更どうこうする話でもないんだよな。テストがとっくに終了してるのに、返却するときだけ神頼みするような、そんな感じだ。


 それでも願掛けしたくなっちゃうよな、俺含めて。そういう国民性なのだろうか、日本は。


 あ、そういえば次の対戦相手も確認してなかったな。使う武器くらいは把握しておきたかったが、それもいいか、なるようになるさ。


 あ、視界が切り替わった。目の前にはバンダナを巻き、手には包帯を巻いている、身軽な相手がいた。これはどう見ても抵抗されるな、拳で。


「3、2、1、」


 相手も拳かー、前回のイベントと同じように決勝までは剣を取っておこうと思ってたのだが、それだと二人とも拳で抵抗することになるからなー。まあ、いいか。


「GO!!」


「しゃらぁああああああ!!」


 え、どゆこと? そんなに気合い入れる? 俺なんかした? 怖いんだけど。


 相手は戦闘開始すぐに俺の元に、凄まじい怒号と共に飛び出してきた。気圧される程の気迫だ。流石にこれは攻撃を受けたくはないな。拳の連続攻撃のしやすさは俺が一番知ってる。それをされると普通に死にかねないからな。


「【叡智啓蒙】」


 これは、なんだっけ? 結構いろんなスキルをまとめてできたスキルだ。効果は超強い、相手の動きとかが分かるってやつだな。まあ、他にもいろいろたくさんあった気がするが今使うのはそのくらいだろう。そして、これさえ発動してしまえば相手の攻撃なんて手にとるように分かり、避けれてしまうんだな。


「なっ!? なんだお前は!」


 なんだお前と聞かれては、答えてあげるが世の情け、


「……」


 いや、流石に恥ずかしいな、こんな状況で自己紹介なんてしてらんねーよ。俺が攻撃を全部完璧に避けてせいで、相手が動揺している隙に、


「【魔闘支配】」


 まずは、リバー。


「くっ……!? いいパンチじゃねーか! だが、俺の拳の方が上だぜ!」


 でも、その拳は俺には当たってないんだよな。それより、こいつ戦闘中なのに、煩すぎる、黙ったらもっと強くなるんじゃないか?


 その間にも俺が全ての攻撃を避けていると、とても悔しそうな表情をした。


「なんで、なんで当たんねーんだよ!! もうこうなったら、使うしかねーよだな、俺の必殺技を! くらえ! 【電光石火】!」


 いや、だから一々口にださなくていいだろ。そんなことしたら大技が来るのなんて誰でも分かるぞ? 


 って、速いっ! 流石に相手の必殺技を舐めすぎてたようだ、気づいたら肉薄されている。くそ、いつも体感時間が伸びて、呆けている俺にツケが回ってくるとはな。もう、回避も望めない、これは食らうしかないのか?


 いや、ここで食らってしまうと、コンボを繋げられる可能性がある、ここはなんとしてでも食い止めなければ、あ、


「【麻痺の魔眼】」


「……っ!!??」


 良かった。予め使うスキルをリストアップしておいてよかった。そうじゃなきゃこんなとっさに出てこなかった筈だ。このスキルは消費魔力に応じて相手の動きを止められる。ただ、魔力を消費するのにも時間がかかって、一瞬しか止められなかった。


 だが、その一瞬で十分だ。


「【藕断糸連】」


 ズダダダダダダダンッ!!

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