第311話 敗者


「しゃらぁああああああ!!」


 絶っ対に倒す! 俺こそが最強プレイヤーなんだ! ましてやこんな奴に俺が拳と拳の殴り合いで負けるわけねーんだよっ!!


 ん? 攻撃が当たらない? さっきからずっと殴っているのに、全然かすりもしないぞ?? 


「なっ!? なんだお前は!」


 今何をされている? 何故当たらないんだ? パンチのスピードが遅い? 軌道が読まれている? だとしても全部避けることなんてできんのか? さっきからずっと避けられてんぞ? 


 もしかして、時間制限付きの全ての攻撃を避ける、みたいな効果なのか? もし、そうなら取り敢えずはそこまで殴り続けないといけないが、そうじゃなかった場合が怖い。まだまだ全力で行く。


 ノーモーションパンチ織り交ぜながら、軸を変えて、右をメインにしたり左をメインにしたりして殴っていく。


 くそ、それでも傷一つつけられねぇ。どうなってんだよ、こいつは。倒せるビジョンが全く見えねぇぞ、おい。


 ま、まずい!


「くっ……!? いいパンチじゃねーか! だが、俺の拳の方が上だぜ!」


 いい、リバーを貰った。思ったよりもなかなかいいパンチだったな。やるじゃねーか。だが、俺のパンチのが強いんだぜ!


 くっそ! なんで当たらないんだ!! どれだけ速く動いてもどれだけ速く打ってもかすりもしないってどういうことだよ!!


「なんで、なんで当たんねーんだよ!! もうこうなったら、使うしかねーよだな、俺の必殺技を! くらえ! 【電光石火】!


 俺の必殺技、電光石火は一瞬で相手に詰め寄り、超高速の一撃を決める技だ。それに、魔法要素として、火と雷の要素が加わって更に爆発的な推進力と威力を生み出している。これほど強力な技は他とないだろう。


 これは決勝まで取っておくつもりだったが、こればっかりは仕方がない、負けたらもともこもねーからな。


 だが、これで終わりだな。これは流石に見切れねえ。不可視の攻撃だからな、どんだけ俺のパンチを見切れるからってら意味ねぇぞ。


 ほら、阿呆面晒したまま突っ立ってる。俺には気づいちゃいねぇな、というわけで、俺の勝ちだなっ!


 そういって俺が拳を振り抜こうとしたら


「なっ……!?」


 体が動かない。いくら振り抜こうとしても、まるで体が石像になったかのように動かなくなった。


 その時間はどれくらいだっただろうか、一瞬のようにも思えたし、永遠に続くかとも思った。だが、その刹那、


 ズダダダダダダダンッ!!


 気づくとそこは俺があのコロシアムに行く前にいた場所にいた。どうやら俺は負けて死んだらしい。結局なんで攻撃があたらなかったのか分からないし、最後の方は何をされていたのかすらわからなかった。


 なんだ、アイツは、俺とあの魔法使い以外にあんなに強い奴がいたなんて思ってみなかったぜ、これでまた負けた回数と倒すべき相手が増えたな。また、修行にいくか。

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