第309話 アッパー
ふぅ、余裕だったな。名前はなんだったか、白だか黒だかそんな名前だった気がするが、あの盾使い、そこそこ強かったがまだまだ俺を全力にさせてはくれなかった。
俺を全力にさせる奴はアイツ以外いねーからよ。アイツには勝ち逃げされたままだから、ぜってーこの手でぶちのめすまでは諦めらんねー。拳闘師の強さを証明するまではな!
俺のゲームでの日課は、ひたすらシャドーボクシングだ。常にシャドーをしながらフィールドを駆け回っている。モンスターに遭遇したらそのまま実践ができるって感じだな。
俺はリアルではボクシングをやってたんだが挫折してしまってな。もう、やっていなかったんだが、嫌いにもなれなかった。そんな中現れたのがこのゲームってわけだ。
四六時中殴ってられるし、殴れば殴るほど強くなれるし、俺にとっちゃあ最高の環境だった。俺はこの世界では最強と思っていた。だけど違った。この世界には拳だけでじゃなく、剣も魔法もなんでもありだった。
そんな中でもある程度の奴らには勝てたんだが、初めてのイベントで初めての敗北を味わった。悔しかった。だが、それと同時に懐かしさもあった。
そうだ、これだ、と。俺を奮い立たせていたのはいつもこの敗北と悔しさだったんだと、このゲームで勝利に慣れすぎていたが、あの敗北が俺の目を覚ましてくれたんだ。
そして、俺はそこからただ拳を振るうだけでなく、強くなる為に拳を振るった。自分の快楽の為じゃなく、強くなる為の拳だったから、当然辛い時もあった。
だけど、悔しさがバネになって俺を支えてくれた。
あの野郎をぶちのめす為に俺は突っ走ってきた。だからそれを達成するまでは俺は止まれねぇんだよ。
おっと、もう次の試合みたいだな。
視界が切り替わった瞬間、俺の目の前には一人の男が立っていた。ボサーっとしていて、まるで覇気がない。なんだこいつは? やる気はあるのか? どこかで見たことありそうだが記憶にねぇ。
だが、装備はかなり良さそうな物を使っているようだ。ここまで、来るに足る力はあるようだな。だが、俺に勝つにはそれじゃ不十分だ。
「ん?」
相手の武器は何かと思って見てみれば、相手は何も持っていない。もしかして、無手で俺に挑むってことか? 正気か? いい度胸じゃねーか。そんな喧嘩の売り方があるとはな、面白ぇ、やってやるぜ!
どっちが本当の拳闘師かを賭けて、勝負だ!!
「3、2、1、」
絶っっっ対に勝つ!!!
「GO!!」
「しゃらぁああああああ!!」
次回、主人公vsアッパー
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