第294話 男子的浪漫


 ん? 明鳥止風? あれ、俺の見間違いか? 鳥が烏に見えるのだが流石に違うか。ステータス画面はそこまで小さくないんだが、なんにせよ量的に一つ当たりの面積が小さくなっているから読みにくいんだよな。まあ、スキルが強ければ名前は気にしない気にしない。


「ん、どうかしたのかね? スキルの効果が不服であったのか? もう戻ることはできぬからそれと更に何かを掛け合わせることで少しでも紛らわせるか? 万が一の時にはそうやって対応しているのだが、それは更に望まぬ方向に行く可能性が高いからお勧めはせんがね。どうするのかね」


「あっ、すいません。別にスキルの効果に不満があるわけじゃないんですよ。このスキルどうやって読むのかなーって思ってただけなんで」


「そうか、ならば次の選定に参るぞ。まだまだ選定しがいが残っているのだから」


 この爺さんはとても前のめりのようだ。選定人として面白いスキルが沢山あるのは楽しいんだろうな。子供の頃のカードゲームに似ている。自分が持っているカードで苦心してデッキを構築していたが、新しいパックを買って、強い、新しいカードを手に入れた時の高揚感たらたまんないよな。カードゲームをしていた同士ならば分かってくれるはずだ。


「次の選定は思念の頭突き、ロケット頭突きの二つだ。お主がなぜこの二つを持っているのかは聞くまいが、これらを選定しないのは私の今までの経験が許さないのだ。相手の実体の有無に関わらず、問答無用で突撃する、そんなスキルになるじゃろう。選定、しても良いか?」


 ロケット頭突きと思念の頭突きかー。頭突きは最古参と言っても過言じゃないくらいずっと一緒にいるからな、どんな大出世をしてくれるのかとても楽しみだ。それになんだかんだ龍化時とかに使ってたからな、これからの活躍も期待したい。


「はい、お願いします」


「【思念の頭突き】、【ロケット頭突き】が統合されます」



ーーースキル【パキケファロ頭突き】を獲得しました。



【パキケファロ頭突き】‥自身の生存を賭けて全身全霊の頭突きを行う。その場から弾け飛ぶように繰り出し、実体の無い的にも効く。このスキルを発動して相手が倒れなかった場合は死ぬ。


 ん? ん?? これ、とうとうやっちまってないか? ロケット頭突きと思念の頭突きはもともと棲み分けできていたから統合するとどうなるか気になっていたんだが、ゲーム側がとうとうふざけ出したようだ。


 俺はこう見えても小さい頃に恐竜にはまったことのあるんだ。これも分かる男には分かるだろう。そして、そんな有名な恐竜の名前を出されたら流石にもう何年と触れていなくても自然と蘇ってくる。幼き頃に見たAR体感シアターのパキケファロサウルスの姿を。


 あの時は本当に怖がっていたのを覚えている。何故あそこまでリアルに再現できるのか不思議だった。迫力がもう段違いなのだ。体験していない人がもしいたら是非行くことをお勧めする。人間の矮小さを痛感させれる。特にティラノに襲われたら小さい子なら確実に漏らすだろう。


 おっと、話が逸れすぎたな。ゲーム側の付けた名がふざけているって話だったな。だって、パキケファロ頭突きは流石にふざけてないか? どうやったら思念とロケットがパキケファロになるんだよ。語感も良いか悪いか微妙なところだし。まあ、あの特徴的な石頭だけでなく、その生態系を丸ごと含めてその名が付いたのだろうが、予想外すぎて笑うぞこれは。


「ん、大丈夫かね? 流石にこれはいけたと確信しているのだが、お主の好みと合わない可能性もなくはないからな。もしも嫌なら遠慮なく言ってくれたまえ」


 ん? 俺の好みの問題だって? そりゃドンピシャに決まっている。恐竜の中でも一人石頭という特徴を持って孤高に生きているイメージがあるからな。俺の今とぴったりだしな。


 それと、できればスキル発動時にパキケファロサウルスの気持ちが味わえれば完璧だな。どんな感じなのか今すぐ試してみたいぞ。


 え、結局良いのか悪いのかって? 


 名前はふざけていると思うが、個人的には勿論、最高に決まっているぜ?

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