第293話 鏡花水月


「ふむ、やはりな。先ほど見た時から思っていたのだが、スキルが粒揃い過ぎてあまり選定の余地がないのだよ。それでもできる限りやるつもりだがそうなってくるとマニュアルの余地がほとんど残らぬかもしれん。それでもいいか?」


「そうですね、最悪面白半分でマニュアルをするのでスキルが二つ以上あれば大丈夫ですよ」


「そ、そうか、では行くぞ。先ずは過食、悪食、変換の三つだ。どんな量でも、どんなものでも喰らい自らの血肉に変えていく、そんなスキルとなるだろう。選定、しても良いか?」


 お、その三つは俺がそこまで使う機会が無かったスキル達だな。食べる、という行為自体あまり頻繁に行うものでもないし、変換は気を習得するらへんで覚えたはいいものの今では無限魔力やらなんやらあるからな。これはナイスチョイスと言えるだろう。


「はい、お願いします」


「【過食】、【悪食】、【変換】、の三つのスキルが統合されます」


ーーースキル【悪衣悪食】を取得しました。


【悪衣悪食】‥どんな物でも食べられるようになり、食べたものの総量によって自身のステータスを任意で上昇させる。効果時間は一律で三時間。


 ん? 強くね? 確かに三つを全て合わせたようなスキルになっているが、使いやすさが段違いだな、まだ食べるという行為に対してはなんとなく忌避感を覚えてしまうが、その壁を乗り越えたら活躍してくれそうな匂いをプンプン漂わおせているな。やるじゃないか選定人さんよ、もっと頼むぜ。


「結果はどうだったかの? 満足のいく結果であれば私としても嬉しいのだがな。まだまだ続けさせてもらうぞ? なんて言ったってスキルの量が尋常じゃないからな」


 そんなに多いのか? まあ、沢山してくれるって言うんならこちらとしても喜んでさせるぞ。


「お次は、花鳥風月と明鏡止水だ。この二つならばお主もなんとなくわかるのではないか? 自身を強化し相手を弱体化する、攻防一体の技となるだろう。しても良いか?」


 お、確かにな。どちらも日本らしさあふれる四字熟語だしな。それになんとなく次のスキルの名前も分かった気がする。まあ、失敗することは無いのだから安心しておこう。


「【花鳥風月】、【明鏡止水】が統合されます」


ーーースキル【明烏止風】を獲得しました。


【明烏止風】‥自身のSTRとAGIが二倍になり、最適な行動をとることができるようになる。相手はSTRとAGIが半減し、上手く体を操作できなくなる。


 ん? おっと? 鏡花水月じゃないのか? てっきりそっちだと思っていたぞ。なんせ元になった二つのスキルから文字を二つずつとっていかにも上位互換って匂いしかしないのに、まさか逆とはな。鏡花水月じゃない方が選出されたな。


 まあ、こっちも普通に強いし、意味から考えても恐らく、相手の追い風は止み、辛い戦いが終わり夜明けとともに反撃をする、そんなことを一羽の鳥が教えてくれるような名前だ。非常に良い、趣があってなかなか和風だ。このスキルも是非使っていきたいな。


 ん? 鳥?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る