第290話 拷問
「おい! この領主様の命が大事ならそこを動くな。今から俺はこいつと少しばかり話がある。くれぐれも邪魔をしようとか、助けようとか思うなよ? ただ命が無駄になるだけだからな」
これで脅しは十分だろう。ついついガラでもないこと言っちゃった気がするが、気にしたら負けだ。自分が気にした瞬間から黒歴史というのは生み出されるのだ。自分が気にしなければ良いだけなのだ。因みに俺は黒歴史を三つほど持っている。もちろん、墓場まで持っていくつもりだがな。
領主の手足を縛り俺はどこか別室に行く。どうやら応接間のようだ。自分の応接間で拷問を受ける気分はいかがなものなのだろうな。
確実に戦意喪失してしまっている領主を引き連れてきた俺は、正面に座り、口を開いた。
「手荒な真似をしてすまない。あと、先ほどは物騒なことの様に聞こえたかも知れないがそれも忘れてくれ。あれは私の本意ではないのだ、二人だけの時間を作るためにどうしても必要だったいわゆる言い訳、決まり文句のようなものだから理解して欲しい。
そして、どうか私に協力して欲しい。私はある人の紹介からその選定人に会いたいだけなのだ。別にその人をどうこうするわけでもなく、ただ話を聞きたいだけなのだ。もちろん快く教えてくれるのならば私も何もしないつもりだ。
ただ、時間が長引けば長引くほどあなたの体が、先端から徐々に無くなっていくかもしれませんが」
「分かった! 分かったから私の命だけは助けてくれ! なんでも話す!」
別に命を取るとは言ってないんだけどな。勝手に勘違いしてくれたようで何よりだ。まあ、実際に俺が拷問しようとすると殺すことは絶対にない。死んでしまえば情報も手に入らないし、一瞬で楽になってしまうしな。
だから俺は蘇生させる。苦しませて殺して蘇らせる。それでワンセットなのだ。ただ苦しむだけ、ただ死ぬだけ、よりも何倍も嫌だろう。苦しみは耐えることが出来ればそれまでだし、死ねばそこで終わりだからな。このやり方はその二つの両方のいいとこ取りをした最強の拷問方法なんだ。
まあ、だから何かをされる前に早々と諦めたのはある意味賢い選択と言えるかもしれないな。
「おー! ご協力ありがとうございます! 話がこんなにもすぐまとまるなんて、やはりご領主様ともなれば時間の大切さをしっかり理解しておられる。流石でございます!」
「い、いいから早く進めろ! お前は選定人の何が知りたいんだ!」
「おっとまだ少し元気が有り余るようですね。少しおとなしくしてもらってもいいですか?」
「【麻痺の魔眼】」
あ、そういえば無限魔力の影響で魔眼の効果もかなり使えるようになったな。魔力を沢山込めて口すら動けないようにする。これはなかなか良いな。
「そうですね、ではまずその人はどこにいるのか。それを教えて下さい。ある程度情報はあるのですが、それだと情報不足でしてね。教えて頂けると非常に助かります」
「あ、あいつは山の中腹にある灯台の中で暮らしているぞ! だ、だが私でも協力を示さなかったのだ! お前みたいな悪党があいつに協力してもらえるわけがない!」
え? 灯台? まじで? それって……灯台下暗し、いや灯台下暮らしじゃね?
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