第288話 超特大
後ろから何か言われたが気にしない。人の言うことを一々気にしていたら始まらないからな。人の言うことを聞かない人生も一度は歩んでみるべきだ。その点、このVRは本当に素晴らしい、人生を再び体験できるようなものだからな。
例えばもしここである特殊な技能、それこそ鍛治やデザイン、裁縫などを親方から学んだりぶっつけ本番で挑むこともできる。それをノーリスクで趣味として楽しむようにな。だが、例え趣味であってもこの世界では生計を立てねばならぬのだからある程度本気になる。
そして本気になって続けることができたものを現実に輸入する、そうすれば現実の職種やその内容にもクリエイティビティ溢れたものになるのではなかろうか。まあ、大人になってからは厳しいかもしれないが、子供の可能性を最大限に引き出す、好きなことをさせたい、と思うのならばあながち悪い手段ではないかもしれない。
あれ? なんの話からここまで飛んだんだ? まあ、いいか。そんなわけで俺は今、領主の館に入っている。門番には止められたけど、一度入ってしまえば中にいる人たちは、領主の館にいる人は皆門番のフィルター全幅の信頼を置いているからもう中に入った時点で勝ちなのだ。唯一の懸念点はその門番が俺のことを追ってくることだな。
「おいっ! 待て! 勝手に領主様のお屋敷に入るでない!」
言ってる側から追いかけてきたようだ。まあ、流石にそうなるよな、野放しにしておいたら責められるのは自分だしな。だが、俺もそうやすやすとは捕まってあげない。曲がり角を曲がって即座に、
「【隠遁】」
「こら待て! 止まりなさ……い? あれ、どこへ行った? なんでいない? 確実にここを曲がっていただろう?」
よしよし門番は困惑しているようだ。流石に目の前で怪奇現象を体験したら驚くだろうな。まあ、モンスターとかいるしこっちの人の方が慣れていたり耐性がついてたりしそうだな。だってお化けとかよりも隣のモンスターの方が明らかに脅威だろう。
お化けを怖いって言えるのがどれだけ幸せなのか俺らは今一度考えた方が良さそうだ。
そうして、門番の手から完全に逃れられた俺はその状態のまま領主の元に向かった。別に領主が今回の目的ではないのだがここまで来たからには会ってみたくなるし、それでなんらかの有益な情報をもって帰りたいよな。
ここがどうやら領主の館のようだ。かなり豪勢な建物だな。こんなでかい扉をつける意味はあるのか? 人が通れれば良いだろ。なんだ? 巨人でも招いてるっていうのか?
ガチャ
いた。扉を隠遁を解除しながら開けるとそこには領主の両サイドに主人を守ように巨大な一つめの巨人が設置されていた。うん、これならあれだけ扉が大きかった理由も頷けるな。まあ、良いだろう。
って、え? 巨人? しかも一つめだからサイクロプスってことか? まじかよ、この領主頭おかしいんじゃないのか? だいぶやばいだろこれは。対外的にも何か言われないのか?
「おい、其方は誰だ。誰が私の前に立つことを許可した? 失せろ。ガー」
ガー?
「ワカタ、オ、レガタオス」
はい?
ッドーーーン!!
いや、危な! 開幕からいきなり初手で全力パンチする? それにしっかり俺が潰れれように真上から殴ってきやがったぞこいつ。
しがも、名前がガー。言いづらい! 誰だこいつの名前をつけたのは! センスなさ過ぎだろ! 付けられた方が可哀想だ。そいつの身になってやれよ、巨人だからって感情、気持ちがないわけじゃないんだぞ? それを分かってるのかあの領主は!
そうだな、これは巨人は悪くないから倒さずに無力化して領主に改めてさせよう。そうすることでこいつの無念も晴れるだろう。
ガーのためにもいっちょやりますか!
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