第287話 灯台からの景色
灯台が見える場所、か。まさか灯台が山の中腹にあるとは思っていなかったから、かなり予想と違った。海を一望しつつ灯台も見える、みたいなのを想像してたから早くも混乱している。
山の中腹にある灯台がよく見えるって、それはどういう状況なんだ? って、山がよく見えるからといって海が見えないわけではないのか。もう、ますます混乱してきたぞ。こうなったら逆転の発想だ。
『ハーゲン! 灯台の上にいけ!』
そう、逆転の発想で灯台がよく見える場所ではなく、灯台からよく見える家を探せばいいんだ。そうすれば逆もまた然りだろう。
というわけで灯台のテッペンに来たわけだが、どの家もよく見える。いや、よく見えるというのは違うな、どれも等しく同じように見える。これらの家は全て灯台が見えるということか。ってそれもそうか、ここから見えるんだからな。つまりここから見えない家は灯台が見えないということであり、つまり、つまり……?
よく分からなくなってきた。取り敢えずここから見える所にその爺さんがいるのは間違いないから、ここからよく見える家を順に当たってみるとしよう。取り敢えずそうだな、一番大きな家に行ってみるか。
『ハーゲン、あそこの大きな家に屋根の上に止まれるか?』
『あそこっすね? 余裕っすよ! ほら!』
速い、相変わらず速いな。もうほとんどタイムラグが無かったぞ。今の感じで飛んでたんならやっぱりさっきはめちゃくちゃ沖の方に出てたんだろうな。景色変わらないから全然意識できなかったな。ハーゲンがもし地球にいたら世界旅行し放題だな。まあ、その前にいろいろ問題が発生するだろうが。
その家の屋根に降り立つとやはり大きかった。東京ドーム半個分程度だろうか。東京ドームの大きさを正確には知らないからなんとなくなんだがな。まあいい、取り敢えず入ろう。
「すみませーん、ここのお宅におられるのはどちら様でしょうか?」
これだけ大きな家だ。そりゃ当たり前のように門番がいる。
「ん? お前は何者だ? ここはこの港町を治めておられる領主様のお屋敷と知らぬのか? お前はどこからなんの為に来たのだ、返答によっちゃ相応に始末させてもらうぞ」
そう言ってその門番は少し殺気、というか凄みを出してきた。全く怖くも凄くもないが。
それにそんな質問の仕方したら正直に言う奴いなくなるだろう。どんな正直者でも嘘つきたくなるほどだ。俺も適当に返事をしておくか。
「私は旅のものでして、ここに来れば探し物が見つかると言われたもので」
「そ、そうか。ならばゆっくり探すといいぞ、ここは食べ物から景色までなんでも逸品だからな。心ゆくまで楽しむといい。探し物もそのうち見つかると思うぞ」
なんか凄く自分の街を推してくるな。まあ、確かに良い街とは思うけど。というわけで領主の家、おじゃましまーす。
「ちょ、おい! 何をしている!」
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