第279話 頂上の景色
流石に悪魔に聖槍は効果抜群だったようだな。
そういえば悪魔を倒すのはかなり久方ぶりだった。悪魔関連のクエストも進めていかないといけないな。
でも、これで正真正銘、二度目の正直で、帰らずの塔をクリアだ。
いやー、長かったな。終わってみればあっという間な気がするが、それにしても長かったと感じる。まあ、その分得られたものもとても大きかったと思うがな。
今、俺は悪魔がいた部屋にいるからここから出るには一旦ドラゴンを倒した闘技場に戻らないといけないはずだ。そしてそこから正規の手段で外に出られると思う。外に出るだけなら一瞬でできるのだがちゃんとクリアした感が欲しいからな、あと達成感も味わいたい。よし、というわけで行くか。
闘技場に戻るとそこは俺が出て行く前の状態となんら変わらない状態でそのままあった。宝箱は開きっぱなしだし、ドラゴンと戦った形跡は……そんなにないが血痕とかはあるな。
周囲を見渡してみると、観客の一部分が光っていた。恐らくあそこから出られるのだろう。なんかまるで野球のドーム球場のようだ。そしてそこまで移動すると、その光は何処かから漏れているとかではなく、完全に自ら発光していた。
大きさ的に人が通れるほどだが、その先を除いても何も見えない。これも魔法陣のように転移できるものなのだろうか。これがなにかは分からないが行ってみるしか俺には選択肢が無い。というわけで行くか。
そこに思い切って飛び込むと、いつもどおり視界がホワイトアウトした。まあ、今回は当たり前といえば当たり前なのだ。なんせ、白く光っているところに飛び込んだのだからして当然なのだ。そして、視界が開けるとそこは塔の屋上だった。
一陣の風が吹き抜ける。
気持ちいい、なんとも言えない達成感と高揚感に身を任せ大きくひと伸びした。こんな感情、かつて現実世界で味わったことがあっただろうか、いや無い。この感情を味わえるだけでもこのゲームには価値がある、そう思えるほどだ。
もうずっと両腕を天に向かって伸ばし全身を伸ばしていると、
「お主、いつまでそのままでいるつもりじゃ?」
ふと後ろから声をかけられた。
後ろを振り返ると年老いた老人がいた。どこかで見たことがあるような……?
「この塔を攻略しろと言ってからどれだけの月日が経ったと思っておる。儂はずっとここで待っておったわい。それにしても時間がかかり過ぎじゃ、お主何をしておったのじゃ?」
塔を攻略しろ? そんなこと言われ、あ、思い出したぞ。そうだこのジジイ俺の師匠になるとかいって飯屋に俺を連れていき、勝手にステーキを何十枚も食べた挙句、最終的に俺に払わせた奴だ。
俺も結局お金なくてギルド宛に請求しといたんだったな。あの後逆に何も音沙汰ないのだが帰ったら俺ギルド員クビにとかなってないよな? 大丈夫だよな?
そうか、そういえばこの塔をクリアしろとか言ってたな。途中まで忘れていたがこの塔には魔力事情を解決するために攻略しようと決意して、後からこの目的も追加されたんだったな。もういろいろ時間経ちすぎて何がなんだか。
魔力に関しては魔力吸収をゲットしたことで、その目的を思い出したし、達成した。でも師匠から言われたことなんてとうの昔に忘れてたな。
それにしても本当に頂上で待ってたとはな。俺がどのくらいでクリアできると思っていたのだろうか。俺は測ってないし待ってもないからどのくらい時間が経ったかは分からないが、途中で死に戻ったりスキル買いに行ったりしてたからかなり時間かかってたんだろうな。
まあ、申し訳ないとも思わないんだがな。
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