第278話 機械仕掛けの呪術師


 俺は再び奴の元へと向かった。


「ふっ、また来ましたか。愚か者は学習もしないのですね、まあ、その低脳な頭脳ではそんなことも考えられないのでしょうね。では、死んでください、【ス・カース・カー】」


 俺は死んだ瞬間、韋駄天走で再び帰らずの塔に行き奴の元へいく。


「よぉ」


「なっ! 今、死んだはずでは!? ま、まぁ何度来たって結果は変わらないのです。では死になさい、【ス・カース・カー】」


 そう、結果は変わらないのだ。


「よぉ」


「な、なんでそこにいる!? お前と俺の格の違いはもう十分すぎるほど分かっているだろう? なぜそうも挑戦してくるのだ!」


 自分がその立場になって改めて実感するが、悪者やモンスター、魔王っていうのは辛い立ち位置だよな。ストーリーとして倒されることが決まっているのだから、どれほど魅力的で圧倒的でも必ず主人公の手によって討ち滅ぼされてしまう。主人公は倒すまで蘇ってくるとしたらこんな不公平なことはない。


 なんで他のプレイヤーはみんなゾンビアタックをしないんだろうな。勝つまで挑めばいつかは勝てるのにね。というわけで、


「よぉ」


「なっ、しつこいぞ! いい加減諦めろ! 自分の立場くらい弁えろ! 何度来たって同じことなんだよ! 死ね!」


 もう、キャラが完全崩壊してる。語尾もおかしいし、言葉遣いも変わってる。人が挑戦しているのにそれに対して激怒するってどういう了見だ? 人は挑戦する生き物だぞ? というわけで、


「よぉ」


「くっ、これは私への嫌がらせか! そうなのか、そうなんだな! 攻撃しようとはせずにそうやって私の精神を揺さぶり、弱った所を狙うつもりなんだな! そんな姑息な手に私は負けない!」



ーーー一時間後


「よぉ」


「……」


「よぉ」


「……」


 あの悪魔は完全にただ俺を殺してくれるマシーンになってくれていた。完全に気持ちを殺してくれてただ俺が死ぬためだけに、スカスカスキルを撃ってくれる。


 根はこんなにいい奴だったんだな。うん、でも悪魔だから殺さないとだもんな、もうすぐしたら楽になるからもう少しだけ待っててくれよ。


「……」


 もう、返事もせずに了承してくれるなんてどんだけ俺のことを信頼してくれてるんだよ。もう、照れるな嬉しいぜ。お前のためにも俺がもっと効率を上げてやるぜ!


 そして、遂に、


ーーースキル【呪術無効】

   スキル【溶解無効】を獲得しました。


【呪術無効】‥状態異常:呪いを無効にする。


【溶解無効】‥自身の体がなんらかの力、作用によって溶解することを無効にする。


 もう、お前って奴は本当に良い奴なんだな。スキルを二つもくれるなんて太っ腹にも程があるだろ。ありがとな。


 でも悪魔だから殺さないといけないんだよな、ごめんな。じゃ、バイバイ。


 ザシュ


 首を一刀両断にしたのだが、勝手に自動修復してしまった。まだまだ生命力や魔力に関してはかなり残っているようだ。つまり、本能で動いているということだろう。


 悪魔ってどうやって倒すんだっけな、前に倒したのは随分と前だから忘れちまったな。あ、そうだこれは流石に使えるだろ、


「【聖槍】」


 槍で突き刺した体が修復することはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る