第276話 一瞬の快楽


「「え?」」


 さっきから本当にコイツは何を言っているんだ? 頭大丈夫か?


「な、何故お前は死んでいない! 今確かに私がお前の首を切り飛ばしたはずだぞ! そ、それなのに何故平然とそこに立っていられる?」


 あら、本性が出たな。これが素の性格なんだな。それにどうやら俺がなにかされたと思っていたのは、どうやらコイツに首を斬り飛ばされていたらしい。特にそんな感触はなかったのだが、そうと言われたからにはそういうことだろう。


 まさか、斬り飛ばしたとかいっておきながら、一ミリも切れていないなんてことがあるはずもないからな。だって相手は悪魔だぞ? 何か裏があるはずだ。


 ……いや、でもかなり相手が焦っていたよな。これはもしかして本気でやってるのか? まあ、俺に物理攻撃が効かないってことを知らなければ確かに動揺くらいはするかもな。


 では、俺から行こうか。折角終わったと思っていたのにまだ続きがあるとは。やり込み要素は別に嫌いじゃないが、別にそれらもストーリーを全クリした直後にやるものではないだろう? 普通、余韻に浸るだろ。


 というわけでコイツはもうささっと倒したい。


「ククククク、思い出しましたよ。そういえばアナタは物理攻撃にとても強いんでしたよね。だから先ほどの私の攻撃が効かなかったのでしょう。ですが私の本職は物理攻撃ではないのです。ですから、私の真の力をお見せしましょう!」


「【スローリーロンリー】!」


 相手が何か面白いスキルを唱えると俺の体は動かなくなった。いや、正確には少しは動かせている気がするのだが、全く動かないのだ。まるで自分の体がとても重くなったようだ。動こうとすることはできるが全く動かすことができない。


「どうです? 私の力の一端は。私は悪魔の中でも珍しい魔法使いなのです! ただ野蛮に攻撃する悪魔達とは一線を画す存在なのです!」


 おー、だいぶ大きく出てきたな。一線を画すとかいっちゃって大丈夫か? それよりコイツは爵位どれくらいなのだろうか?


 以前悪魔と戦った時ほど脅威には感じていないのだが、それはコイツが単に弱いだけなのかそれとも俺が強くなっただけなのか。どちらかかはわからないが、まあ久しぶりにあの爺さんの所に行けばわかることだろう。


 というわけであいつを倒したいのだが、実はまだ体が動かないのだ。地味にこのスキル強いな。スキル名は強そうじゃないのに、スキルは名前によらぬものだな。


 まあいいか、ずっと待っておこう。どうせ死ぬことはないしな。


「な、なんだお前は! 何故ずっと攻撃しているのにダメージを受けていないのだ! あ、そうかわかったぞ。お前は体が止まっているせいで、痛みに顔を歪めることすらできないのだな。クハハハハハ、苦しめ苦しめ!」


 コイツは俺が止まっていて反撃できないことをいいことに、好き放題言ってくれるな。だがそれも時間制限付きだ。今しかできないことだから、今のうちに楽しんでおくんだな。


「クハハハハハ! フハハハハハ! 死ね死ねー!」


「……」



ーーースキル【遅延無効】を獲得しました。


 はい、シバキます。

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