第275話 格の違い


「ちょっと待て」


 どうも変な感じがする。どこからか誰かに覗き見られているような、ネチネチした視線を感じるのだ。気持ち悪い何かを感じる。


 俺の気配感知でも殆どわからないが、少し本気を出してみよう。


「【ゾーン】、【瞑想】、【気配感知】」


 座って集中して気配を感じ取ろうとしてみる。どうやら俺の左斜め前方から僅かに感じ取れる気がする。本当に僅かしか感じ取れないが、集中してみて改めて確信した。確実に何かいる。


 スキルを解いて少しその方向に進んでみる。そしてまたその場で気配感知をする。そうやって徐々に目標に近づけていく。それを繰り返していると遂にその地点まで到達した、気がする。


 ここまで来たらもうすることは一つだ。


「【看破】!」


 スキル発動させると、何も無かった床からなんと魔法陣が出現したのだ。これは確実に何かあるな、ここまで来て行かないという選択肢は正直ありえないだろう。


 そうして俺は魔法陣にのると、もう体験することのないと思っていたお馴染みのホワイトアウトが発生した。


 そして視界が再び開けるとそこには……


 悪魔がいた。


「ヒヒヒヒヒ、まさかここまでやってくるとは思いませんでしたよ。ずっと見ていましたがアナタは今までで一番強くて可笑しいですね。ここまで長くこの塔に居座り続けた人もいませんし、こんなに早く私の愛しのドラゴンを倒した人もいませんよ?

 そして何よりここに来た人はアナタが初めてです。ようこそ我が家へ」


 そこにいたのはいかにも貴族風ではあるが、どこか嫌味で気持ちの悪い悪魔がいた。雰囲気ではかなり余裕なオーラが窺えるが、実際どれほど強いのかはわからない。かなり謎めいている。


「あそこの塔に一応の連絡用として魔法陣を置いておいたのですが、まさか見つかるとは思いもしませんでしたよ。かなり厳重に隠したつもりでしたが、それを見つけたアナタは本当に素晴らしい。だが、それと同時に実に愚かです。

 あれだけ厳重に隠してあげていたのにわざわざ見つけるとはね、好奇心とは時に自らの命まで犠牲にしてしまうものですよ。それを身をもって知りなさい」


 ザシュッ


 ん? 今俺は何をされた?


「何をされたのかも理解できていないでしょう、それが私とアナタの格の違いですよ。ですがそれを今知ったところで手遅れですがね。アナタの首は今一刀両断にされているのです。あまりにも速く鋭い斬撃は相手に斬られたことすら認知されないのですよ。これこそがまさに至高かつ究極の一撃です」


 ん? 何を言っているんだコイツは。


「まだ現実が理解できていませんね。アナタは確かに強かったですが、私の方が上手だったということです。もう、アナタは死んでいるのですよ」


 ん?? コイツの言ってること、全く理解できないぞ?


「これはこれは立ったまま死んでいるようですね。人間にしてはやる方でしたが、所詮人間ですね。雑魚の中でいくら強くても雑魚ということです」


「ん? 俺はまだ生きてるぞ?」


「ふふふふ、そんなことあるわけな……いじゃ、ない、です、か……?」


「「え?」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る