第270話 駆け引き
俺が相手の剣をへし折ると、相手はなんとその剣を逆手に持ち替えてダガーのようにして攻撃してきた。
今の俺のように長剣二本だと間合いがどちらも同じであるため、相手に距離感を掴まれやすく、慣れられるのも早い。その反面、片方がダガーのように短いと、思わぬところから攻撃をもらいそうになったりして危険なのだ。
まあ確かに間合いの内に入らねばならないから確かに危険度は上がる。ただその分ハイリターンが得られるというわけだ。やりにくい。相手をしていると、超高性能AIと戦っている気分だ。常に最適解を導き出されているような気がして、殆ど隙がない。
拳でやりあっている時は肉弾戦だったためステータスの差が如実に反映されたが、剣を使うとなると技量もかなり影響する。俺もかなり鍛えたつもりではあったが、最適解からは程遠かったらしいな。まあだからと言って今のこいつの剣筋を真似したところで、意味はないんだがな。
ずっとやりあっていると流石にステータスの差が響いてきたのか、相手も徐々に苦しそうになっている。もう一本の剣は折られないように慎重に立ちまわっているのが一つの要因でもあるかもしれない。
それでも体力という概念がなく、無尽蔵に攻撃してくる。まあ、俺も似たようなものだがこちらは精神的な疲労があるのだ、人間だからな。相手はまるでサイボーグなのだ。心が感じられず淡々と攻めてくる。
だが、ようやく掴めてきた。相手の癖が見抜けてきたのだ。フェイントの癖もわかってきたため、このターンで決着をつけることができそうだ。
相手の左斜め上からの斬りかかりを俺は半身で避け、右の剣で突きを放つ。その突きに対して相手は最低限のしゃがみで避ける。そのまま突進して左のダガーで斬りつけてきた。それを俺はバックステップで躱し、後退しながら相手の顔面に面を放つ。いわゆる引き面ってやつだな。
相手はそれすらも頭を最小限に引くことで避け追撃にと迫ってくる。だが、そんなことは織り込み済みだ。相手が俺に突っ込んできた時点で俺も同時に前方に飛び出していく。このクロスカウンターの形がこいつにはよく効くのだ。恐らくこんな突飛な行動をとるという選択肢がないのだろう。
ここでギアを一段上げる。俺は相手に慣れさせないために実はそこまでトップギアというわけではなかったのだ。まあ、ステータスにかなり差があるのにいい勝負してたらおかしいからな。まあ、確かに相手の技量も凄くて少し苦戦したのも事実なんだけどな。
相手が斬りかかってきたタイミングよりも一拍速く肉薄し、その首を一瞬の元に断ち切る。これで俺の勝ちだな。
ドサッ、ゴボ、ゴボゴボゴボゴボッ
俺が影の俺の首を刎ね飛ばすと、そこから急にまるで沸騰したかのように泡立ち始めた。いや、煙が立つと言ったほうが正しいだろうか。体積が膨張し始め今にも爆発しそうになっている。影の俺の元体はもう目もあてられなくなっており、原型を留めていない。
その体はどんどん膨張していき、気づいたら俺の身長など軽く超えるほど大きくなっていた。それでもまだまだ止まる気配がない。更に大きくなって遂に……
龍になっていた。
「あ、」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます