第269話 真贋
準備は万全だ。これで基礎スペックに大きな差ができただろう。あとは立ち回りの差だ。俺をコピーしたのだから俺との差を広げれば広げるほど、俺が成長すればするほど、俺の勝率は上がってくるのだ。
具体的な立ち回りだが、先ずは相手の癖を読む。どんな思考をプログラムされているかは知らないが、俺の攻撃や動きに対してこう反応する、というのはあるだろう。だからそれを繰り返し行って身につけていく。
かなりスペックに差があると思うのだが普通に良い戦いをしてしまっている。中に搭載されているのがかなり高性能なのだろう。だが、徐々にこいつの癖も読めてきた。恐らくこいつは自分が左利きであることを生かすような立ち回りを心がけていると思う。
常に俺から見た右側に避けるし、俺の肝臓目掛けて執拗に殴ってくる。俺が普通にボディに殴ってもそこには肝臓はないから相手だけの特権だ。本当にサウスポーって有利だよな、どんな場所においても。
それでもずっと相手にしていると段々と体が慣れてくる。最初は掴めなかった距離感も今ではバッチリだ。もう徐々に相手を追い詰めてきている。相手がガードをしようとしてもそれよりも速く俺のパンチを差し込んだり、フットワークの軽さで相手を翻弄して攻撃したりと、少しの差が大きな結果の違いを生む。
もう、完璧に掴んだ。相手の攻撃に合わせてクロスカウンターで締めだ。
ッダーン!!
相手が突撃してきた勢いと、俺が迎え撃つ勢いが衝突することで物凄い衝撃が生み出され、相手を一撃で伸ばすことに成功した。もう一人の俺は地面に大の字に伸びている。
案外呆気なかったな。やはり、ステータスは偉大なようだ。
「うぉ」
俺が完全に倒したと思っていると、まるでプロのダンサーのように、寝転がっている状態から手を使わずに直立状態にまで復帰した。凄い、こんなことできるのか? 俺もしてみたいな。
そんな悠長なこと考えてはいられないようだ。急にスイッチが切り替わったように雰囲気が変わった。そして、どこからともなく二振りの長剣を手にした。そう、俺が愛用している、海龍の怒髪と帝王の化身だ。やっぱり側から見てもカッコいいな。
剣を装備したということはこれから第二段階というわけか、まだ俺と戦わないといけないのか。これもイベントに向けた対策と思って自分の弱点を探すつもりで戦おう。
ギャインッ!
一旦様子見をしようと思ったら急に襲いかかってきた。慌てて防いだものの、そこから怒涛の連続攻撃が始まった。先手を取られてしまったため防戦一方だし、徐々に蓮撃が発動しており攻撃が重くなってきている。どうにか攻撃をやめさせなければ、簡単に持っていかれそうだ。
あ、そうだ、
「【脆弱化】!」
キンッ!
ふっふっふっ、どうやら相手も相当戸惑っているようだ。俺も思い出して良かったな。これが穴掘りの成果だ。脆弱化を相手の剣にかけて相手の剣をへし折ってやったのだ。このスキルを使おうという思考回路にならないのが本物と偽物との差だ! なんてな。
これで実質一本対二本の戦いで、こちらが圧倒的有利にたったぞ。さあ俺、この圧倒的不利の状況をどうする!?
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