第265話 新参者


【吸血】‥噛み付いた相手から血を奪う。噛み付いた強さによって吸う血の量が増える。


 おおー! 吸血か! そういえば俺はそもそも血液不要だし、他人の血をゲットする方法もなかったから、正直死にスキルだったんだなあのスキル。この婆さん、やりおる。


ーーー称号《吸血鬼》を獲得しました。


《吸血鬼》‥スキル【吸血】と闇夜のマントを獲得する。身体能力が向上するかわりに、太陽、聖水、ニンニク、十字架に対して弱体化する。犬歯も伸び、切り替え可能。


 え? 俺吸血鬼になっちゃったの? まじかよ、それにオンオフ可能な吸血鬼とか聞いたことないぞ。まあ、夜でもうちょっと強くなりたいって時に発動すればいいのか。そんなタイミングあるのか分からないが、まあ貰えるものは貰っておく主義だ。有り難くいただいておこう。


「ありがとう婆さん、これで俺もまた少し強くなれたと思う。また縁があればよろしく」


「お前さんはもう強くならんでいいさね。それより、感謝しないといけないのはこっちさね。孫を止めてくれただけでなく、もう一度あの二人に会わせてくれるなんてね、夢みたいさね、本当にありがとうさね」


 これでこの階層での役目は終わったようだ。婆さんの家まで戻ってくるとそこには魔法陣が出現していた。


「ありがとう、ではまた」


 そういって魔法陣に乗ろうとすると、


「ちょっと待ったー!」


 そこにはあの孫がいた。


「はぁ、はぁ、お、俺を弟子にしてください!!」


 すると、魔法陣が薄く消えていった。恐らくこの問題を解決しないとまた現れてはくれないのだろう。


 それにしても厄介な問題を持ってきやがったなこいつも。弟子にして下さい? 俺は吸血鬼でもないのに何を言って……俺もさっき吸血鬼の仲間入りしたのか、忘れてたぜ。


「なんで急に俺の弟子になりたいと思ったんだ? 俺は特に何もしてないだろ?」


「貴方はとても強いです、それこそ古株の吸血鬼達にも引けをとらないどころか、余裕で勝ててしまいそうなくらいに。確かに俺は勢いとノリだけで調子に乗っていました。ですが、俺は見返したいのです、俺を嘲笑ってきた奴らに!

 親も帰ってきたから、一緒に暮らしたいですが、それよりも親やお婆様に相応しい吸血鬼になる為の修行がしたいのです! だから、どうかお願いします!」


 わお、こんなに熱い想いがあったのか。俺が婆さんと森にある墓に行って、そして親が帰ってきて、いろいろ思うところもあったのかもしれないな。


 それに反抗的な態度も親がいないことによるものだったのかもしれないな。でも親がいても強くなりたいという気持ちは変わらなかったか。うん、いいね、アツいね。


 でも流石に俺は親子との時間も大切だと思うからなー、迷う。


「そうだ、俺が暇な時に呼び出せるように俺の従魔になるか? そうしたらいつでも俺が好きな時に呼び出せるから稽古はつけやすくなるぞ。それに、何もない時は親とも過ごせる。どうだ? こうしないか?」

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