第255話 違和感と幻想


 カプッ


 いや、知っていたぞ流石にな。なんだよ初対面の奴を、しかも女性が男に向かってベッドで寝ていいよっていうわけないだろ。流石にそれは甘い幻想を見過ぎだ。そもそも家の中に入れた時点で怪しかったが、まあそこまではないとしてもベッドはやりすぎだ。


 そう、俺は違和感に気付いていたし絶対おかしいと思いつつもあえて相手の手の平の上で転がされてあげてたのだ。


 そしたら案の定こいつもヴァンパイアだったってわけだ。女の吸血鬼なんているのか? なんて考えていると、


「なに? 何故お前からは血が吸えないのだ?」


 お、本性を現してきたな。こいつはどうやら女の姿に化けていたようだ。本当の見た目はゴリゴリの吸血鬼だし、口調もガッツリ男口調なんだな。これでよくあそこまで女装出来たな。それは吸血鬼の能力なのだろうか? それでも俺だったら別の何かに化けるだろうし、女装は抵抗あるぞ?


 まあいいか、人の趣味は人それぞれだ。いや、鬼だから鬼それぞれか?


「お、お前は人間じゃないのか!?」 


 溢れ出る雑魚キャラ感、こいつは女装でもしないと人の血が吸えなかったから女装しているだけなのかもな。そう考えると少し気の毒ではあるが、すぐに楽にさせてあげよう。


「おい! 質問に答えろ! さもなくばお前を八つ裂きにするぞ!」


 血を吸えなかった相手を八つ裂きに出来るって思えることが脳内お花畑でいいな。ちゃちゃっと始末しよう。


「ん? 俺は人間だぞ? ただ、お前ら吸血鬼に血が吸われないってだけだよ」


 グサッ


 本当に可哀想だったから一応返事だけしておいて、もういつも通り心臓を剣で突き刺した。どんなに強くても弱点を突けばそれまでなんだよな。これでもうお別れだ。


「ふっふっふっ、私がそれほどの攻撃で死ぬとでも思ったのか? 確かに外の雑魚どもはそれでも死ぬだろう。しかし、あいつらは紛い物だ。本物ではない。本物にはただ心臓を攻撃するだけではダメなのだよ。

 我々吸血鬼を倒すには聖なる力が必要なのだ。聖なる力が無いそのようなヘナチョコ攻撃なぞ私達には効かないのだよ!」


 おうおうおう、自分の弱点を自分から暴露してくれるとは随分気前が良いようだな。


 それにしても聖なる力か、それはどうやったら手に入るのだろうか。そんな、おいそれと手に入るような代物ではなさそうだしな。こいつも爆散させたらどうにかならないかなー。とりあえずやってみるか。


「ファイヤーエクスプロージョン」


 バンッ! ……シュルシュルシュルッ1


 うわキモ、爆散させたらその数秒後に再び肉どうしが結合しあって元通りになりやがった。なんつー再生力だよ、凄い通りこしてキモいぞ。


「ふふふふふ、人間は愚かですね。無駄な抵抗が本当に好きなようだ。ただ、そんなことをして意味がありません。それを無駄な努力、っていうんですよ?

 確かに貴方から血を吸うことは出来ませんでしたが、殺すことはいとも簡単に出来ます。ですのでここでお別れですね」


 ムカつくなーこいつこいつだけは絶対にやらないと気が済まない。なんとかして聖なる力を手に入れなければな。聖なる力聖なる力、聖なる、せい……


「あっ」

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