第252話 ヴァンパイア


 どうやら俺はヴァンパイア、吸血鬼に殺されていたんだな。とは言っても俺が殺され続けたのはヴァンパイアなんてかっこいいものではなく、どちらかというとゾンビやグールの方が近い気がする。


 俺の勝手な予想だと、恐らく死人を無理やり蘇生させて吸血能力と人を襲うという、本当に必要最低限の知能だけを与えたのだろう。つまり黒幕は別にいるってわけだ。


 そりゃヴァンパイアとか吸血鬼なんてかっこいい名前を冠している奴がこんなに弱かったら流石に興醒めだぜ。


 それにしても吸血鬼か。確かに吸血鬼って西洋のイメージがあるからこのロンドンのような街並みにもとてもフィットしている。とても雰囲気が出ていて臨場感がある。普通のプレイヤーならこれに加えいつ襲われるか分からないという恐怖もあるのだから、相当怖いだろうな。下手したらそこら辺のお化け屋敷よりも怖いかもしれないな。


 ただ、臨場感はあるといっても、もう俺にとっては見慣れた風景だし特段吸血鬼もどきが怖いわけでもない。死なないからな。だからこそ今から何をすればいいのか迷う。


 ここに来た時も言ったが、本当にRPGのようなのだ。だからこそ次すべきことが何か分からない限り先に進めないのだ。皆もしたことがあるのではないだろうか。ヒントが少なすぎてゲームが行き詰まったことが、そして泣く泣く攻略本やサイトを覗いてしまったことが。


 俺は考えることよりも先に進めたくなる人間だったから、行き詰まったらすぐに見ていた記憶がある。まあ、ゲームの楽しみ方は人それぞれだからな。


 一旦ゲームの話は置いておこう。それよりも今はこれからのことだ。現状行き詰まっているから何かアクションを起こさなければならない。俺に今出来ることをやるしかないか。


 俺に今出来ることといったら、全力で吸血鬼もどきを倒すことだな。これに意味があるのかどうかは分からないが、倒してダメということはないだろう。


 ん? 待てよ? そういえば俺あいつらの倒し方知らないな。まだ倒したこともないしな。なるほど次のフェーズに進むにはあいつらを倒せるようになれってことか。


 吸血鬼が苦手なものって確か、ニンニクだろ? あと日光、それに聖水とかか? 代表的なもので十字架もあるな、忘れていた。ただこれくらいか、意外と多いようで少ないな。今すぐ用意できるものになるととても限られてくるし、どうしたもんか。


 まず、日光は無理だろ? 流石に俺が太陽になるのは厳しいだろう。そしてニンニクも難しそうだな。このゲームに存在しているのかも分からないし、存在していたとしても生息地不明だし今すぐには確実に無理だ。


 となると残りは聖水と十字架か。聖水の定義もあやふやだし、用意出来るものでもない。十字架が一番現実的で用意できそうだがクオリティは全く保証出来ない。それこそ木の棒をクロスさせただけでも良いのだろうか? そんなレベルだぞ。


 とりあえずやってみるか。適当にその辺に落ちてる木の棒が……ない! そもそもあまり木が生えていないのだ。遠くには見えるが近くにはない。仕方ないから手持ちで作ろう。たまたまアイテムボックスにあった謎の骨二本を使って十字にクロスさせる。


 あ、そうだアイスに凍らせよう。


「アイスー」


『なにー? ごちゅじんちゃまー』


『これを凍らせて欲しいんだ。出来るか?』


『よゆーだよー! まかせてー、【れいとうびーむ】!』


 え、ここに来てありきたりな技名。意外だ。それにしてもまだ手札があるんだな、ほんと何もんだよこの子は。


『よし、バッチリだ! ありがとう。また何かあったら頼むぞ!』


『うん! わかったーおやすみー』


 おやすみって、もう寝るのか。子供は沢山寝て早く大きくなるのが仕事だからな、しっかり休むんだぞ。

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