第251話 人影
そう、俺は死んでいた。
俺が敵っぽい人影を見つけて、急接近して斬りかかろうとした。いや、実際に斬ったのだ。しかし、相手は倒れる事なく俺に反撃してきて、俺を即死させていた。
どういうことだ? 不可解な点が二つある。相手が死ななかった理由と俺が死んだ理由だ。
まず相手が死ななかった理由だが、考えられるのは普通に俺の攻撃が外れていたという可能性。確かに当たった感触はあったが急所ではなく、相手が普通に反撃できたということだ。だが、この可能性はかなり低いと思う。何故なら相手が人型であるならば、大体急所は決まっているだろうからだ。
俺はもうほぼ無意識に急所を狙う癖がついているのだが、それが外れることはほぼないだろう。ということはそこが相手の急所じゃなかった、ということかもしれない。
そして俺が死んだ理由だが、俺が死ぬにはかなり手段が限られているのだ。だからこそ、気になるし興味深い。もし、再現性があるのならばしばらくは付き合ってもらうことになりそうだな。
まあ、それはそうとして、実際的な問題を考えよう。相手は俺の首筋に歯を立ててきた。この攻撃自体は物理攻撃無効のある俺には効かないのだ。だから、俺を倒した要因は他にあるってことだ。
よし、ある程度纏まってきたな。これ以上は考えても仕方がない、もう一度行って何度か死んで考えよう。なんて言ったって俺にはスキル取得委員会がついているからな。
こいつは本当の名探偵なのだ。どんな不可解な殺人事件でも確実に殺害方法を特定できるのだ。今までの事件で未解決事件はほぼないはずだ。これは俺のステータス欄が物語っているな。
よし、では行こうか。
俺が再び到着すると、相変わらずの雰囲気だった。もう、いつどこから殺されるか分かったもんじゃない。だからこそ俺は自らが囮となり、事件解決に向けて情報を集めるのだ。
また気配感知を使うと今度は思いの外近くにいた。近くと言っても俺がいる街道の一個裏側の裏路地だ。普通に攻略しようとしてたらまず行こうとは思わない場所だ。
だが、それでも俺はいくぞ。どうやって死んでいるのか気になるし、死ぬことで俺は強くなるからな。もうすぐイベントも近いわけだしもうそろそろ追い込まないとな。
現場に急行するとそこには案の定人影があった。今度は顔がハッキリ見えているが、目は虚で焦点が定まっていない。どうやら、ただの人間ではないの確実のようだ。
俺が何もしないでいるとゆらりゆらり近づいて来た。まるでゾンビのようだ。そのままゆったりとした動作で俺の元まで近づいてきて、俺の肩をガシッ! っと掴んだ。意外と握力が強いな。そして、そのまま自身の口を俺の首筋に近づけてきたのだ。
俺はその時あるものを見てしまった。その口から覗かせていた二つの長い犬歯を。
そう、俺を殺していたのは吸血鬼だったのだ。
吸血鬼ってなんかかっこいいよな、圧倒的悪役感で普通に強い。でも弱点もいっぱいある所がいいよな。
それにしても血を吸われて死んでいたんだな。それさえ分かれば後は死ぬだけだな。
というわけで逝ってきます!
ーーースキル【血液不要】を獲得しました。
【血液不要】‥血液が体内から無くなる。状態異常:出血が無効になる。
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