第249話 氷のパワー


 アイスの先制攻撃によってこの部屋にいた全員がこちらに注目した。勿論奥に控えているボスを含めてだ。


 今すぐにでもボスを倒しに行きたいのだが、生憎取り巻きが多すぎるのだ。どうにかしてこの取り巻きを突破したい。取り巻きをアイスに任せて、俺がボスを倒しにいくか?


 そう思ってアイスに指示を出そうとすると、


『ごちゅじんさまがーまわりのわるいひとたちたおしてー、あいすがあのいちばんわるそーなのたおすのー!』


 え?


 まず、ごちゅじんさま、これはとっても可愛いしポイントも高い。ただ、それ以降の話の内容は流石に同意しかねるし、可愛くもないぞ?


 アイスが一人で奥のボスを倒すって? いや、確かにアイスは強いけど、流石に一人では厳しくないか? ここは主人としてしっかり説得しよう。


『いや、アイス一人であんなに大きな悪い相手を倒すのは大変だぞ? 俺が倒してやるからアイスはまわりn


『あいすがたおすのー! あいすひとりでできるのー、ごちゅじんさまがまわりのたおすのー』


 よし、可愛いから言うこと聞こう。こんな可愛いのに俺が押し付けるのもダメだしな。それにしたいことをさせないっていうのは親目線からすると教育上良くないな。やりたい事はとことんやらせて、それで失敗したら俺がカバーして、アイスには経験と学びを得てもらえばいいからな。


 よし、なら俺が倒すか。


「【千本桜】」


 俺にも広範囲魔法があるところをしっかり見せておかないとな。ここで主人の威厳ってものを見せつけるのだ。


『うわー! しゅごーい、おはながたくさーん! きれいなのーごしゅじんさますごーい!』


 ご主人様は噛む時と噛まない時があるんだな。まあ、毎回そうだとありがたみが薄れるからな、偶にでいいのだ。


 それより、これで取り巻きを倒し終わって今からはアイスの最終章が始まる。これはアイスの挑戦なんだ。どんな結果になっても俺は暖かく迎えるぞ。


『頑張れ、アイス』


 俺はそう言ってアイスの頭を軽く撫でてやった。するとアイスは、


『あいす、がんばるー!』


 そう言って勢い良くボスである、2メートルはあろうかという大男のもとに駆けていった。勿論俺もいつでも飛び出せる準備はできている。


「おいおい、散々俺の家族を血祭りに上げてくれた癖に俺にはこのちょっと大きめのワンコ一匹かよ。随分と舐められたモンだな。コイツがお前にとってどんなものかは知らねえが、タダじゃおかねえからな、とりあえずこのワンコから」


 アイスが飛び出すと、相当ご立腹のボスが俺に対して喧嘩を売ってきた。アイスの事は眼中にもないようだ。それよりそのワンコをどうするんだ? 指一本でも触れたらこっちこそタダじゃおかねーぞ。


「まずはこの犬っころをどういたぶってやろうかなー? 手足をもいではらわたをぶちまけ、それを擦り潰して俺の可愛い可愛いホワ


『うるさいのー【ぶらっじーろーず】!!』


 大男の発言にイライラしてきて、もう少しで手が出そうになった時、アイスがスキルを唱えた。


 そして、大男がいた場所には一輪の花が咲いていた。それも良くみてみると、そのバラは氷の結晶で出来ているようだ。


 ん、アイス? 話が違うんだが?

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