第248話 アイスの力


 どんな大規模魔法だよと思わずいいたくなるほどの、超広範囲で圧倒的殲滅力を持った魔法をぶっ放してくれたアイスだが、ちょっと強すぎやしないか?


 アイスは今までの二つの魔法、アイスコフィンとブリザードバレットだけでも十分すぎるほど強かったのに、まさかまだこんな手札を持っていたとはな。


 最初見たときは、引っ込み思案で怖がりで甘えん坊だったはずなのに、どういう心境の変化があったんだ? まあ、積極的な分に関しては全然いいことなんだけどな。


 それにしてもこの規模の魔法を撃てるのか、おそらくハーゲンのブラックサンダーよりも広い範囲だろう。それにハーゲンのは威力と範囲がトレードオフの関係だから、広範囲にしようとすると威力が弱まってしまうからな。


 俺の広範囲魔法といえば、千本桜とニュークリアボムだろうか。でもこの二つに関しても千本桜は俺が操作するもので即効性と同時性に欠けるし、ニュークリアボムは俺らにも被害が及ぶからな。


 そういう訳でアイスはこれからも重宝しそうだな。想定してた強さの何倍も強い。なんで俺の従魔はこれほど強いんだろうな。まあ、強いのはありがたいんだけどさ。


 よし、切り替えて次に進もう。従魔が強い分俺がもっと強くなればいいだけだからな。さっさとクリアして俺自身も強くならねば。


 そうして気配感知を使ったのだが、なんと気配がほとんど無かったのだ。さっきの大部屋にいた輩がほぼ全てなのか、遠くに気配が少しあるくらいだ。しかも、その気配は今までの雑魚キャラとは違う気配であるためボス戦の可能性が高い。


 流石にアイスといえどもボス戦は荷が重いだろうから俺が処理したいと思う。アイスには後学の為にそれを見て学んで欲しいな。


 そして遂に気配があった場所までたどり着くと、そこには大きな扉があった。しかも先程のものとは違い、非常に豪華な作りをしている。間違いなくここがボスのいる場所なのだろう。よし、いこう。


 ゆーっくりとその扉を開けると、またしてもギィーっと音が鳴り、中にいる人達にバレてしまった。


「あん? テメェは誰だ、どこの島のモンだぁ? ここに無断ではいってくるたぁどういうことか分かっているんだろうな?」


 奥にいるであろうボスではなく、扉のすぐ近くにいた取り巻きから喧嘩を売られた。ただ、取り巻き程度ならアイスでも倒せるだろう。


『アイスー、この悪い人たおせるかー?』


『うん! たおせるー!』


『【くればすぷれしゅー】』


 アイスが唱えると、今にも襲いかかって来そうだったチンピラの足元にパックリと亀裂が入ったのだ。そうなると当然の如くその真上にいた輩は落ちることになり、全身が落ちたという所で、ッダーン! っと勢いよくその裂け目が閉じたのだ。


 うん、すごいね。


 もう今更新たな技の一つや二つ驚かないが、またしても強力で凶悪なスキルだな。これは酷い、アイスコフィンとも似ている気はするが、避けるにはかなり距離を取らなければいけない。亀裂は縦横共に広い為、わずかでも遅れてしまえば入ってしまうだろう。仮に足が亀裂に入ってたとしたら、それは足がなくなることを意味しているだろうからな。


 まあ、空中にいる的には効果がないから、そこでアイスコフィンと棲み分けをしているのだろう。どんな敵でも一定の効果がある氷の棺と、地上の敵にだけは猛威を奮うクレバスプレス。


 恐ろしいなこの子は、将来どんな大物に化けるのだろうか。


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