第247話 あいすのちから


 おいおいアイス、一撃で相手を即死させてしまったぞ? どう考えても強すぎじゃないか。しかもまだ子供でこれってことは成長したらどんなことになるんだ? 恐ろしいな。


『よしよーし、アイス良くやった。アイスって強いんだなー、これからも頑張ってくれよな』


 俺がなでなでしながら褒めてあげると、嬉しそうに目をキラキラさせて、尻尾が千切れそうなくらい振り回して、


『やったー、あいすはつよいのー! これからもがんばるのー』


『そういえばアイスー、アイスは他にも魔法使えるのか?』


『んー、わかんないけど、まだまだたくさんつかえそー』


 まだまだ沢山使えるってまじか。さっきのがアイスの使える魔法の中でどれくらいの強さなのかは分からないが、これでわかることになるだろう。それにまだまだってことはアイス何者?


 おっと、気配感知に三人ほどの気配を確認。いきなり三人相手は厳しいかもしれないが一応アイスにやらせてあげよう。どんな技を使うのか非常に気になる。


『アイスー、アイツらを倒せるか? アイツらも悪いことしてるからお仕置きしないといけないんだ』


『わかったー、あいすがおしおきするー!』


『【ぶりじゃーどばれっと】』


 は?


 一旦落ち着こう、現状整理からだ。まず、アイスがスキルを発動すると敵である三人の背後から急に魔法陣が生み出され、氷の礫が発射された。そう、まさしく弾丸のように。


 スキルの詠唱が上手く言えておらず、可愛いなーなんて思っていたら、スキルの効果は全然可愛くなかった。むしろ恐ろしいほどだ。しかも氷の弾丸で倒しているからもし仲間が来てもどうやって倒したかが露見しづらいという、地味に厄介な性質も持っている。まあ、味方にいる分には頼もしい限りだ。


 先程のアイスコフィンと比べると若干ブリザードバレットの方が強いかな? という程度でそれほど大差は無かったように思う。ただ、使いやすさや対複数を想定すると、圧倒的に後者になるのだろう。


 そんな風にアイスの技の講評をしていると、目の前は行き止まりになっていた。しかし、気配感知ではこの先に多くの気配があるのだ。何かないかと調べようとしたら、普通に目の前の壁だと思っていた場所が大きな扉だった。


 あれ、この先に結構気配があるんだが、俺はそれは別々に存在しているのかと思っていたが、この扉の大きさからして、どうやら一つの大部屋にみんないるっぽいな。これはアイスも流石に苦戦するだろう、いやかなり厳しいか? 


 まあ勝てるかも怪しいが、危険になったら俺が出る。あくまでもこれはアイスの初陣だからな。


『アイス、今度は悪い人がたーくさんいるみたいなんだ。倒せる自信ある? もし危なくなったらすぐ俺に頼るんだぞ?』


『わかったー! あいすたくさんのわるものたおすー!』


 ギーッと扉を開けると、そこには百人に到達しそうなくらいの大勢な人数がいた。これは想定外だ、まずこんなに扉を開けるのが煩くなるとは思わなかった。そして敵の人数もこんなにいるとはな、一斉にこっちを見られたぞ。


『いっけー! 【あいしくるれいん】ー!』


 アイスがそう唱えると、その会場に大量の大きな氷柱が落ちてきた。そう、それはまさしく氷柱の雨のように……


 俺ってそんなに必要の無い存在なの?

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