第242話 閃きと失念
ーーー称号《炭坑夫》を獲得しました。
《炭坑夫》‥一定時間の間、只管穴を掘り続ける。穴を掘るスピードが上がり、スキル
【脆弱化】を取得。
【脆弱化】‥対象の耐久値を下げる。熟練度に応じて効果上昇。
「ふぅ」
流石にぶっ続けで掘り続けるのはきついな。しかもいつ終わるかもわからない道のりだからな、精神的にだいぶ参ってしまった。ただ、この炭坑夫という称号を取得してからは格段に掘るスピードが上がり、効率化も発動する頃には圧倒的な速さで掘り進めていけた。
だが忘れていた問題が一つだけあって、それは牢屋があった場所が地下室ということだ。だからそのまま横に掘っても地上には出られないし、ましてや下に掘っても無意味だ。
だから、俺は一旦横に掘った後に上方向へと掘り進めたのだが、よくよく考えるとモンスターはともかく、女子供や老人を長い距離歩かせて、その上、地上に出るために上に登らせることは物理的に不可能だということに気づいたのだ。
どうにかこの人達を上に上げる方法を見つけなければいけない。穴に水を貯めて、そのまま上に泳がせるっていう方法もあるが、こんなにも弱り切っている彼らを長時間水中に晒せばどうなるかは見えているようなものだ。
梯子を設けるにしても、普通に直線距離でもかなりあるのに、垂直方向に登るなど出来る気がしない。俺が何往復をして運んでもいいがシンプルに大変だしもう少し楽な方法がいい。
「あっ」
閃いた。今回ばかりは自分のことを天才かと思うほどだ。その驚くべき方法とは、俺が巨大化して上まで運ぶというものだ。そうすれば俺は一歩も動くことなく、幾らでも人を運ぶことが出来る。これを閃いたのは大きいぞ。
ん? ということは、穴を掘るのも巨大化しておけば良かったのか? そうすればもっと早く掘り終わったのかもしれなかったのか。
いや、今は考えるのをやめよう。地道に掘ったおかげで炭坑夫の称号もゲット出来たのだからいいんだ。脆弱化はなんだかんだ便利そうなスキルだしな。早速、穴を大きくする為に使ってみるか。巨大化したときに穴が小さかったらどうなるか想像したくもないからな。
いや、むしろ巨大化してすぐに元に戻れば一瞬で穴を広げられそうだ。脆弱化のスキルも合わせればスキル発動だけでいけるかもしれない。そして、巨大化したまま少し穴を大きくすれば完璧だな。
「【脆弱化】、【巨大化】!」
周りの土に向かって脆弱化を施し、俺は巨大になった。すると、
ズズズズズズズ
周りの土が砂場の砂のようにサラサラになっており、俺が大きくなったことでその砂のような土が一気に崩れた。そして、大部分が一度に崩れたことにより、周りの地盤も不安定化し、連鎖的にどんどん土が崩れ落ちてきた。
その光景はまるで土砂崩れのような悲惨さだった。俺はすぐさま巨大化を解除し、落ちてくる土をインベントリに収納していった。どれだけ収納しても次から次へと土がやってくる。ダイナマイトを使って工事する時はこんな感じなのだろうか?
ん? ダイナマイト? ダイナマイトって爆弾だよな、爆弾……
使えば良かった。
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