第241話 獄穴


 階段を下に降りると、そこには一本道が続いていた。雰囲気は薄暗く、明るさとしてはほぼ真っ暗に近いだろう。カビのような臭いもするし、ジメジメしており、気持ち悪い。


 意を決して前へ進んでみると、


 ガシャン、ガシャン!


 俺が進むたびにガシャンガシャンと大きな金属音が両脇から発せられた。最初は軽く驚いたが、ほぼ真っ暗で視界も悪いためか、それ以降はさほど驚かなくなった。そういうもんだと認識してしまったのだろ、ただのBGMとなんら変わりはない。


 本当に恐ろしいのはここの照明がついた時だろう。何がここにあるのか、いるのか、ただ驚かす為だけに作られていたら良いんだが、流石にそれはないだろうからな。


 通路の一番奥まで来たようだ。何故分かるかというと、目の前に壁があり、ポツンとライトで照らされているものがあったからだ。それは、スイッチだった。


 これはここの通路の照明スイッチだろうか、もしそうだとしたら何故こんなところにあるのか疑問でしかない。なんだかんだ、階段を降りてから結構な距離を歩かされた気がする。照明のスイッチくらい階段降りてすぐにつければ良いだろうに、何かあるのだろうか。


 まあ、ここにあるってことはつけろってことだろうし、もうつけないと始まらないからな。取り敢えずつけてみるか。


 カチッ


 うっ、久しぶりの明かりに目が眩んだ。目が慣れるまで時間がかかってしまった。そして、漸く明るさに目が馴染んで来た時、俺の視界には驚くべき光景が目に入って来た。


 そこには通路の両側一面に、ズラーっと檻がならんでいたのだ。そして、中には女子供から老人、更にはか弱いモンスターまでいる。まさか、こんな所に収容施設があったとはな、しかも人間にしてもモンスターにしても弱い奴を意図的に狙って捕まえて来てやがる。


 許せん。


 百歩譲って、この世界には奴隷制度がきちんと整備されていて、ここにいる人間達が合法的に連れてきた人であるならまだ分かる。いや、それでも旦那くそだなオイ。


 だが、モンスターは違くないか? こんな可愛いモンスターを親の元から引き離すなんて、なんてことをしてるんだこいつらは。恐らく、どこかしらの貴族に売りつけるつもりだったのだろう。売る方も大概だが、買う方も買う方だ。なんて趣味が悪い。


 これは俺がひと頑張りする所だな。ここにいる人達を助け出そう。まあ、一番はモンスターの為ではあるがな。


「【気配感知】」


 人とモンスターの気配を探ると、人が三十七人、モンスターが十二体程いるようだ。これは悪質だな、そしてここの組織はこれで完全にアウトな集団ってことが分かったな。本当にチェーン道場だったら面白かったのだが、もう笑えない。


 よし、もう早速救出を始めよう。ん? いや待てよ、この人達を檻から出すのは簡単だ、ただ斬れば良いだけだからな。ただ、その後はどうするんだ? まさかここから自力で出られるわけもないだろうし、俺が護送するにしても何往復すれば良いのかっていう話にもなる。


 まあ、最悪それでも良いんだが、どうせやるならもっと効率良くやりたいよな。何か良い方法はないだろうか。


 檻と言えば監獄だ、監獄と言えば脱獄、オーソドックスな脱獄方法としてはやはり穴を掘ることだろうか。穴掘り以外での脱獄は何かあるだろうか?


 というかそもそも俺がこの組織を壊滅させれば済む話だとは思うが、全員を殺せる訳じゃないだろうし、そもそもこの人達をここに残したまま構成員を全処理してしまったら、それこそ地獄だ。だからやはりここから出すことが先決だな。ボスを倒して目の前に魔法陣が現れたら条件反射で転移しちゃいそうだからな。


 穴掘り、するかー。

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