第240話 スナイパー


 信頼してくれてた人を殺すのって流石に心が痛むんだな。


 よし、あいつにトイレの場所を詳しく教えてあげなかった奴らに報復してやろう。そいつらのせいでチェーン二本持ち野郎は死んじまったようなもんだからな、敵討ちだ。


 まずはここの建物で一番偉い奴を探そう。そいつを倒せばここの階層は終わりだろうし、それと同時にここにいる組織も終わるだろう。まあ、どんな組織かは知らないが、まともじゃないのは分かる。


 そして、ボスを見つけるまでの間に敵に遭遇したら、速攻で倒す。サーチアンドデストロイってやつだな。まあ、結局いつも通りって感じだ。


 対人戦はボスだけでいいか。それまでの噛ませ役は何人倒しても変わらないだろうし、雑魚はもう倒したから大丈夫なのだ。ってなわけで行きますか、


「【隠遁】、【韋駄天走】」


 建物を攻略する際に重要なことは、個人的に階段だと思う。建物と称することが出来る物なら、基本的に階段はあると思うし、階段を通らなければ次のステージには絶対に進めないからな。


 そして、階段を探すことは最上階にいそうなボスを探すこととも関係性はあるだろうし、間違っていないはずだ。つまり、トイレとかを探すくらいなら階段を探した方がまだマシだということだ。


 ボンッ


 敵を見つけたらその場で処理しているのだが、俺の攻撃手段に地味な遠距離攻撃がないのだ。だから、接近するか、大きな音を立てるかの二択を迫られるのだ。


 接近するのは進行方向から逸れるから嫌なんだが、大きな音を立てて警戒されたり追われるのもごめんだ。そのため、素通りしようとも思ったが、俺はある方法を使うことで接近することなく、なるべく小さな音で倒すことが出来た。


 その方法とは爆弾生成だ。


 爆弾生成では形や大きさ威力をMP依存で好きにいじれるから、俺の雀の涙以下のMPで作れる、最小の大きさで最大火力の爆弾を作成した。大きさが小さいためあまり大きな音は出ないが、威力はそこそこあるため、当たりどころさえ良ければ確実に倒せる。


 だが、ミスった場合が一番厄介だ。ここの構成員に敵の存在を自ら教えることとなるからだ。まあ、どちらにせよ死体は放置しているからバレるのも時間の問題だがな。


 因みに超小型爆弾で人を倒すときのコツは、しっかり顔面を狙うことだ。運が良ければ、顔面にあるどこかしらの穴に入って確殺できる。まあ、入らなくてもやれるとは思うが、今のところ全部入っている。


ーーースキル【狙撃】を獲得しました。


「スキル【投擲】は【狙撃】に統合されます」


【狙撃】‥目標を定め、そこに向かって物を投擲することでほぼ確実に当てることが出来る。成功判定は速度、角度、遮蔽物の有無、相手の行動によって決まる。


 お、何十人か倒していたらとうとうスキルをゲットしてしまった。これはなかなか強力なスキルだな。確実に相手の鼻の穴か口の中に入れられる。場合によっては耳の穴もいけてしまうな。


 顔面の内側から爆散するってどういう状況なんだろう。外側から見る分にはなんの不思議もないが、それを受けている張本人はどういう感覚なのか非常に気になるな。自分で検証してもいいが、なんとなく嫌だよな。


 お、遂に階段を発見した。上と下、両方に続く階段があるな。俺は上に行くべきなのだろう。俺もそれは理解している。


 だが、それでも何故か下に行け、下に行けという声が俺の中から聞こえてくる。いや、流石に嘘だが、下に行くことへ何故か魅力を感じてしまうのだ。まあ、こればっかりはしょうがない、とりあえず下に行こう。


 下に行って何もなければまた上にいけばいいだけだからな。


 この選択が俺の今後にとって大きな転換点になるとは、その時の俺には知る由もなかったのだ。

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