第237話 パリィ


 初戦の敵をなんなく倒したのだが、ここの建物にどれだけの敵がいるのか、そもそもどういう人達の集まりなのか、全く情報がない。


 俺が今し方倒した人の情報を参考にすると、全員が趣味が悪くどちらかと言えば脳筋野郎に分類されるが、流石にそんなことはないだろう。あくまでサンプルの一つでしかないから、全員に当てはまる特徴ではないだろう。


 ここにいる輩はどんな集団なのか必死に考えながら進んでいると、再び接敵した。今度は右手には斧を、左手にはまたもチェーンを装備しており、当たり前かのように趣味の悪い服もしている。


 どうなっているんだこいつらは。変わったところといえば右手のナイフが斧になったくらいじゃないか。もしかしてさっきのサンプルはほぼみんなに当てはまる要素なのか? だとしたらそれを採用した誰かは相当やばいな、少なくとも俺とは合わないだろう。


 俺なんて、パーカーにジーパンで良いって思っちゃう人だからな。こんな奇抜な格好、到底出来そうにない。


 俺がまさかの事実に驚愕していると、相手は有無を言わさずに俺に突進してきた。先程みたく、おまだれ作戦を敢行したかったのだが、まあ、仕方ないだろう。


 それに、同じ戦い方だけでなく様々な状況に対応出来なきゃダメだろうからな。これも良い機会と捉えよう。


「お前からは血の匂いがするぜぇ、お前、数十人はやってるたちだな。おめえから死のオーラをムンムンと漂ってるぜぇ、俺の鼻と感覚は誤魔化せねぇ。そして、ここにはこんなに血と死を併せ持った奴はいなかった、よってお前は敵だ! Q.E.Dー!」


 な、なんだこいつは、ツッコミ所が多すぎるぞ。まず、血の臭いってなんだよ、さっき倒した奴のってことか? もしそうだとしてもそもそもそれほど返り血を浴びてないし、臭いが残っているとも考えづらいんだが。


 もしかすると、嗅覚強化的な臭いに関するスキルを持っているのかもしれないな。それでも相当血が好きで毎日嗅いでもない限り、そんな瞬間的にわからないだろう。


 次に、オーラだ。死のオーラってなんだよ、一見カッコ良さそうに聞こえたが普通に不吉なオーラじゃねぇかよ。それに俺の場合誰かを殺したとかじゃなく、ただ自分で死んでるだけだからなおのこと恥ずかしいわ。


 最後に、ここだけはなんとしてでもツッコミを入れなければならない。なんだその語尾は、Q.E.D.って言葉を初めて知った中学生じゃないんだから、やめてくれ、こっちが恥ずかしくなる。しかも、Dの発音が「でー」だったのだ。誰に教わったのかも気になって夜も寝られないぞ。


 だが、戦闘自体はさっきの奴よりかは出来そうだ。動きのキレもいい、避ける選択肢が極力少なくなるように攻めてきているのが分かる。ただ、それでも格上相手だと避けられてしまうし、俺も勿論、思い通りには避けてあげない。


 だが、それでも絶えず攻撃してきて俺に反撃の隙を与えないようにしている。積極的にチェーンも使ってきて厄介だ。チェーンは剣で受けると巻き付かれてしまい、その戦闘では使えなくなる。かと言って何もしないとリーチが長い為、避けても追ってくるのだ。


 そこで俺はチェーンの先についている重りにピンポイントで攻撃している。そうすることで、指向性を無くし、無効化している。


 俺がずっと相手の斧を受け流し、鎖の重りを弾いていると、


ーーースキル【パリィ】を獲得しました。


【パリィ】‥相手の攻撃を自身の武器を用いて弾くあるいは受け流し、瞬時に元の体勢に戻れる。成功判定はタイミング、角度、威力比を総合して算出される。



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