第233話 ブレイカー


 ふぅ、今はどれくらいの高さにいるのだろうか。もう、ずっと天井に穴を開けて、登って、ということを繰り返している。気持ち、中央に進みながら上昇しているのだが、これで合っているのかどうかも分からない。


 だが、ひたすら繰り返していると、遂に、


 ドゴンッ


 俺はとうとう一番上にまで来たようだ。最上階ではなく、一番上、そう俺は今、戦車の上に立っているのだ。


 戦車自体は動いていないため、風も吹いておらず、バランスも安定している。先に機動力を潰しておいて正解だったな。


 だが、俺の予想は外れてしまったな。いずれ操縦室に到達できると踏んでいたのだが、どこかで通り過ぎてしまっていたようだ。


 戦車の屋根、っていうのか分からないが、俺が今いる所には大小さまざまな銃火器が搭載されている。大砲から機関銃まで選り取り見取りだ。


 他にも、物見櫓のようなスコープや本来の出入り口、他にもアンテナなど色々なものが沢山ある。戦車は戦争をする時に非常に重要になってくるため、あらゆる機能が搭載されているのだろう。


 ん、アンテナ? アンテナって普通の戦車にもあるものだったか? まあ、どちらにせよアンテナがあるってことは何処かしらから通信を受けるか、ここから発信するってことだ。


 つまり、このアンテナを壊せば外部との通信の一切を遮断できるってことだな。よし、おさらばだ。


 ポキッ、ポキポキッ


 よし、これで全てのアンテナを破壊したな、後は、操縦室に向かってこの戦車を完全に機能停止させる事が出来れば一安心だな。


 操縦室の行き方は分からないが、取り敢えず、正規のルートから機体の中に入ろう。それにしても、本当にこの戦車デカい。軽くタワーマンションくらいはありそうだ。内装も綺麗で戦車っぽくないしな。よし、ちゃちゃっと操縦室を見つけるか。


 ーーー三十分後


 おいおい、まじで見つからないじゃねーか、どこにあるんだよ操縦室は。一周目はスピード重視で全力で探しつつ構造も抑えて回った。二周目はもう少しスピードを落として、しっかり探し回った。三周目は一つ一つドアを見つけ次第、中身まで確認した。


 それでも無い。そして今から四周目だ。四周目は少し趣向を変えてみようと思う。せっかく全体を隈なく探しているんだから、重複を避けたい。俺自身来た道に来ないようにしているが、被っていることもあるかもしれないからな。


 というわけで、マーキングと破壊を兼ねて俺が通った道、調べた部屋を全て破壊しながら探す。壊し方はいつも通りの魔法に加え、現地調達した、大砲だったり、爆弾だったりも使って行く。


 なんでこのやり方を最初から思い浮かばなかったんだろうな。まあ、最初はすぐに見つかるもんだと思っていたからな。だが、こんなにも見つからないとは、本当に操縦室があるかどうか疑うレベルだぞ。


 ーーー更に三十分後


 見つからない、この戦車に操縦室なんてものはないのか? 操縦室は見つからないが、その代わりとても楽しいことを発見した。

 

 それは、爆破だ。爆破ってなんでこんなにも楽しくて気分を高揚させるんだろうな。自分にも危険が及びうるからだろうか、危険が身近にある分、それがスリルとなり、快感につながっているのだろう。


 見た目も、大きな音と爆発で派手だからな、それも一つの要因であるだろう。後は、手軽さだろうか。ほんの僅かな労力でこんなにも大きなエネルギーを生み出せるのは、てこくらいだろう。


 心のどこかで操縦室が見つかって欲しくないと願っているほどだ。


ーーー称号《壊滅王》

   称号《爆弾魔》を獲得しました。


《壊滅王》‥自分の所有物ではないものを一定数以上壊し続ける。物の破壊、部位の欠損に大補正がかかり、スキル【生者必滅】を取得。


《爆弾魔》‥一定数以上の爆弾を使用して被害をもたらす。爆弾、爆発の威力に大補正がかかり、スキル【爆弾生成】を取得。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る