第230話 緊急事態発生
キュイーーン、ッドーーーン!
もう、タイミングは完璧に掴んだ。まず、キュイーンと溜めている間はいくら動いても俺に照準を合わせてくるから、回避行動は無駄だ。その内に倒せるだけ他の個体を倒しておく。
そして、キュインが終わった瞬間、一拍おいて発射される。この一拍の間に今いた場所から大きく回避するだけで避けられる。慣れれば簡単で、誰でも出来るだろう。
だがこれはあくまでも避けるだけで、効率が良くない。そこで、キュイン音が聞こえたらまずその個体を見つけ、別の個体とキュイン個体の間に割り込む。そうすることで、レーザーを当てる事ができて、お得だ。
さらにここで欲を言うと、移動する際に、今し方戦っていた相手を連れて来る事が出来れば最高だ。かつてない効率で処理が捗るだろう。
最初は攻撃してくる相手を運ぶことに抵抗があると思うが、これは慣れだ。何度も繰り返していけば体が覚える。皆さんも是非、最高効率を叩き出して欲しい。
もう、体が完全に覚えて恐らくスキルの効率化も発動している状態にまで来た。ここまで来ると、ほぼ無意識というか流れ作業というか。とにかく楽だ。
ズババババン!
ふう、これで最後の一体を始末し終えたな。人型ロボットはまあまあきつかったが、ドローンの延長戦も見たいな感じで思ったよりも楽に楽しく戦えた。
これで終わりならばありがたいのだが……
「緊急事態発生、緊急事態発生、市街地B–12二突如、未確認生命体ガ発見サレマシタ。近隣ノ住民ハタダチニ避難シテクダサイ。繰リ返シマス、緊急事態発生、緊急……」
おい、まじかよ、市街地B–12ってどこだ? 多分そいつがボスだろ。ここはどこなんだ? 未確認生命体ってどんな奴なんだろうな。
ズゴゴゴゴゴ
お、なんだなんだこの揺れは、地震か? これももしかして未確認生命体の仕業なのか。これは確実に成敗しないといけないようだな。
揺れと音が共に大きくなってきて、近づいてきているぞ。もしかして、敵は近いのか? 揺れと音が大きくなっている箇所に注目していると、なんとそこから、超巨大な戦車が現れたのだ。
「でかっ!」
もはや、山といった方が分かりやすいサイズ感をしている。正直規格外すぎる。これは緊急事態宣言が発令されるわけだわ。これは一般市民がどうこう出来るもんじゃないしな。普通に俺でも不安なほどだ。
でも、行くしかない。善良な市民を守る為にもここは俺が全力で立ち向かい少しでも時間を稼ぐ。そしてあわよくば、倒す!
まずは敵をしっかり観察しよう。はじめに、見た目や機能的な面で言うと確かに戦車なのだが、実際によく見てみると、日本のものとは随分違う。
日本の戦車は随分と前の時代から変わっていないと思う。俺もそんなに詳しくないが、戦車と聞いて思い浮かぶイメージは殆ど皆一緒のはずだ。
だが、今迫って来ている戦車はそれとは似て非なるものだ。まず、色だ。日本のはカーキーだが、ここのは白を基調とした装甲に水色や黄色、オレンジ等、いかにも近未来っぽい見た目をしている。ただ、隠れる気は一切ないらしい。
それでも普通にかっこいいのが少し悔しいな。
次に武器だな。戦車といえば、基本大きな大砲が付いててそこに機関銃などサブ的な武器が付いているのが主流だろう。
だが、こっちは違う。そもそも規模からして違うためか、普通の戦車に一本あれば十分の大砲が、何本もそこら中についている。そして、それより更にグレードが高い砲台が一つ、中央に座している。
え、これは何を倒す為に想定して作られたものなんだ?
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