第226話 ツケ


 今までの人生の中で、どの生物でも良いが、どこかの胃に入った事のある人はいるだろうか。恐らくいないだろう。だから俺が人類初の偉業を成し遂げた訳なんだが、はっきりと言おう、臭い。すっげー臭い。


 胃の中ってこんなにも、臭いんだな。これは蛇だけかもしれないが、丸呑みして消化中のものがそこら辺にゴロゴロしてる。消化終わってないのに食うなよ。生物を見つけたら、食わないと死んじまうのかお前は。


 それで、まず消化液、これが臭い。丸呑みしたものを溶かすから、相当強いのだろう。そしてその分刺激臭が凄い。


 そして、丸呑みされた生き物たち、こいつらもこいつらで臭い。徐々に溶かされてはいるのだが、瞬時に解けるわけではなく、さらに供給が途絶えないから、なかなか溶かし切れてないのだ。


 それによって腐敗が進み、異臭を放っている。正直、今すぐここから出たいほどだ。幸い俺はずっと息を止めていられるからまだマシだが、息が続かない人はワンチャン死ぬぞ? そんなレベルだ。


 うん、これ以上、ここにいるのはよく無いな。そもそも俺は人類初の偉業を成し遂げたかったわけでも、胃の中が知りたかった訳でも無い。ただ、こいつと象の死体を燃やす為にきたのだ。


 さっきの象がもう、軽く溶け始めている。早く弔わないとな。


「ナパームボム」


 あ、ここでしたら俺まで燃えてしまうじゃないか。まあ、いいか。装備とかだけ一応外しておいて、後はサウナ気分だ。


 数分後、綺麗に跡形もなく燃え切ったようだ。俺は心地よい暖かさにウトウトしてしまったぞ。だが、これで恐らくボスは倒したこととなり、ゴールが出現するだろう。


 ……ん? 何も起こらないぞ? 新しい立方体が出現して、次の階層にいけるんじゃ無いのか? もしかして、ボス間違えた?


 俺がそう不安に感じていると、突如、俺が乗っていた立方体が垂直に落下し始めた。


「うぁあああ!」


 無重力、急に地面が自由落下から、俺は一時的に無重力状態になってたぞ。もし、この立方体に定点カメラでもあれば、カメラからは俺が浮いているように見えただろう。


 まあ、急に地面が落盤するという、貴重な体験を味わせてもらったから、感謝だ。そして、急降下した先は、


「ん?」


 これ、最初に俺らがここに来たときの魔法陣じゃないか? もしかしてまた振り出しに戻るのか? そう、絶望しかけた時、


 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン!


 周りに漂っていた立方体達が一斉に集まってきた。そして、俺が今いる平面上に綺麗に並び、あっという間に広いスペースが出来た。そして、地面から淡く光が発せられた。


 つまり、この立方体で出来た大きなスペースそのものが魔法陣になっているのだろう。


 この階層を作った人、天才じゃね? パズル要素と戦闘要素の両方がいい感じに組み合わさって、最後は原点回帰して、今までのパズル達で一つの魔法陣を作り出す。なんともお洒落な演出だろうか。これは素直に感動できるレベルだ。


 だが、俺には感動的なシーンとはならなかった。


 何故なら、すっ飛ばしてきたパズルで待機していたモンスター達が一同に集結しているのだ。


 しかも、スルーされて待たされたからか、どいつもこいつも、クスリでもやったかのように目が血走っていて、キマっている。


 おいおい。ここからこの量の相手を処理するのは骨が折れるぞ。よし、骨’sを召喚しよう。折れた骨は、骨で回収しないとな。


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