第225話 象
今、俺の目の前には象がいる。流石に現実世界の様におっとりとしていて、穏やかなゾウではないが、モンスターの中では比較的に大人しそうな印象を受ける。
最低限のモンスターっぽさはあるのだが、それでも、正直に言って弱そうだ。こんなにフラグを建てると後々不安になってくるが、恐らく大丈夫だと信じて戦おう。
あと、一つ気になるのが、俺が過程をすっ飛ばしたせいか、倒していないモンスターが、全力でこっちを見ている。そこにガラスでもある!? っていうくらい、立方体の辺ギリギリに立って、食い入るようにみてくる。
妨害さえしてこなければこちらからは何もしないから安心してほしい。
さて、改めて目の前の象だが、俺がこうやって周りを観察している隙にも攻撃してくる気配は無かった。先手は意地でも俺にくれてやるというスタンスなのだろうか。それほどの自信があろとは大したものだ。
図体だけでなく、器も大きいようだ。ただ、それらはこいつの強さには直結しないからな。まあ、先手をくれるなら遠慮なく頂こうじゃないか。
先手必勝で行かせてもらうぞ、先手がどれほど重要か教えてやる。
「【乾坤一擲】、【不動之刀】」
不動之刀を使うときはどれくらい待つのか、いっつも迷うんだが、今回は五秒で良いだろう。伍、肆、参、弐、壱、
「ゼロっ!」
思いっきり、象を一刀両断にしてやった。
あれ? 案の定弱くないか? 俺の予想だと、実は強くて、俺のフラグが綺麗に回収される予定だったんだが……
俺が呆気なく思いつつも、無残な象の亡骸を横目に、その立方に移動しようとした瞬間、象の尻尾が蠢きだしたのだ。
「えっ! きもっ!」
象の尻尾が生きているかのように、蠢いている。まるで蛇のようだ。
「ん? え?」
蛇じゃん、俺が蛇みたいだと思った。象の尻尾はいつのまにか、本物の蛇になっており、そのまま象を丸呑みにしてしまった。蛇って象を食うんだな。それに、捕食する際の、顎を外す瞬間はなんとも言えぬ気味悪さがあった。
蛇の顎ってあんなに外れるのか?
それよりも、第二ステージ突入のようだ。これが本来の姿ってわけか。無事にフラグが回収されて良かったぜ。
俺の目の前には、先程までいた象とは代わって、象を丸呑みして、体が肥大化した蛇がいる。俺に対して異常に威嚇してくるんだが大丈夫か? さっき食った象を吐き出すのだけはやめてくれよな。
だが、実際問題どうやって倒すかだが、今度は先手を譲ってくれそうではないから、不動は使えない。中に象の死体があるって知っているのに、爆散させて色々飛び散るのも嫌だし、蛇ごと死体斬りするのもな。
あ、そうだ、死体はやっぱ火葬してあげないとだよな。だから、燃やそう。
ただ、この蛇は体デカくなったくせにすばしっこいんだよな。だから、なかなかナパームボムを当てられない。ここは虎児戦法でいくか。それが一番確実だろう。
俺はその場に丸まって寝っ転がる。
さあ、蛇よ、俺を食え。
……早く食えよ、流石に食べられたら、どんな人間でもお前には敵わないだろう。だから俺を食え。食ったらお前の勝ちなんだ。だから早く食え。
俺の必死の願いが通じたのか、とうとう俺を食べてくれるようだ。これで俺の、攻撃を当てたいなら、相手の一部になれ作戦が成功するな。
おっと、俺は色々と見てはいけないものを見てしまったようだ。顎外す瞬間、結構グロいな、ってか唾液とか諸々汚いな、おい。
やっぱ食べられたくなくなってきたな、今からキャンセルすることは……あっ、無理ですか、そうですか、分かりました。
誰だよこの作戦思いついた奴、例え思いついたとしてもやって良いことと悪いことの区別ぐらいつけろよ、子供じゃないんだから。
…………すいません。
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