第224話 線引き


 この俺が乗っている立方体を操作して、衝突した先にいる敵を倒して、その立方体に乗り移り、また操作して、衝突させる。


 ざっくりこの階層について説明したがまあこんなもんだ。そして、面倒臭い。だって、立方体を操作するのは何か新鮮で楽しかったが、何回かやればすぐに飽きてしまう。


 それに、操作してもいつ衝突するか分からないのだ。そんなのやってられるかって話だ。恐らく法則か何かがあるのだろう、だがそれすらも煩わしいし、解ける気もしない。


 だが、俺はこの階層の攻略法が分かった。


 この仕組み、ギミックを理解して、シミュレーションをすると、次の魔法陣、つまるところこの階層にゴールにたどり着くためには、絶対にボスキャラがいる立方体に乗らなければならないのだ。


 逆に言えば、そこに乗れることさえ出来れば、後はクリアしたも同然だ。最初はワニ人間で弱かったが、徐々に強くなっていくのだろうな。ならば、最後だけ押さえれば良い。過程なんか知るかよ。


「【天駆】」


 とりあえず、ひたすら上に上がってみる。すると、たくさんのモンスターたちがキューブの上で待機している。可哀想だが彼らに出番はない。そして更に上へ上へといくと、予想通りモンスターの格も上がり、見るからに強そうなモンスターばかりだった。


 うん、勿論彼らにも出番はない。俺に用があるのは最後のボスだけだ。


 ところで、天駆で空中を移動するのなら、直接ゴールまで行けば良いじゃないかと思ったかもしれない。俺もそれは一瞬考えたが、パッと見渡した所、ゴールの様な場所はなかった。


 流石に、ズルはさせないといった所だろうな。まあ、限界までは短縮させてもらうがな。恐らくボスを倒したら、ゴールに行けるキューブが現れるか、ボスのいる所の立方体からしか、行けないという制約でもあるのだろう。


 上から、全体を俯瞰して見ると、一番強そうな奴らが四体ほどいる。多分どれか一体だけがボスだから、それ以外とは戦いたくはないな。しかし、どうやって見極めれば良いのか……


 そうか! 立方体で移動して来て衝突しないといけないってことは、詰まるところ、前の立方体から直線が必ず引けないといけないってことだ。そして、最後の立方体は恐らくどことも繋がっていないはずだ。


 少し面倒臭いが、最初からつなげて見るか。


 上から俯瞰してみているからか、距離間や位置関係がモロにわかってスムーズに線を繋げることが出来た。


 途中、上に上がるタイミングが分からなかったが、その平面上にもう立方体がなくなれば、そのキューブがそのまま上がってくるのでは、という仮説を建てたら、案外うまくいった様だ。


 そして、ラスト、どこにも繋げることが出来ない立方体を見つけた。そこにいるモンスターは、一番地味だった象のモンスターだった。


 こいつだけは絶対にないだろうと思っていたのだが、まさかのこいつだった。まあ、他のモンスターと言っても、亀や鶴とかの地味なモンスターだが、それでもダントツで一番地味だ。


 線引きをしてよかったな。よし、なら、ちゃっちゃと倒して、次の階層に行きますか! この階層は久々に頭を使わせてくれたから楽しかったな。こういうしっかりしたギミックや謎を邪道で解くのって滅茶苦茶気持ちいな。


 こういう裏道が必ず用意されている問題集とか売ってたら、面白そうだな。


 でも、まあ、俺は流石にいらないかな。子供をずる賢く育てたい、リッチなマダム向けに販売したら絶対に売れるはずだから、頑張ってほしい。


 あ、早く象倒そ。

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